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「なんか、入りづらい雰囲気だな……」


三成の様子を見に来て、完全に部屋に入る時期を失った清正が途方に暮れていた。



「よう、清正! 頭デッカチの部屋の前で何してんだよ!?」


そこへドタドタと大きな足音と共に現れた正則。
清正はとっさに正則の口を手でふさぐ。

「馬鹿っ、声がでかい……!」

「もごっもごご、もが!?」

全く聞き取れないが、何すんだよ!? とでも言いたいのだろう。


「お前、何しに来たんだ?」

「もが、ふぐっ」

清正に問われたところで返事などできるまい。
ついでに、勢い余って鼻も一緒にふさいでしまっているため、正則は呼吸すらできていない。


正則が必死に清正の胸を叩くと、やっと手から解放される。

「ぶはぁっ! 死ぬかと思ったぜ……」


肩で大きく息をする正則に、清正は申し訳なさそうに頭をかいた。

「す、すまん」

「で、なんだよ? なんかあったのか? もっ、もしかして、三成死んじまったのか!?」

正則も三成を気にかけて来たのだろう、ものすごい剣幕で清正につかみかかった。


「いや、死んでない。むしろ元気だ、と思う」


「んっだよ心配かけさせやがってー! おい頭デッカチ! 何仮病使ってやがんだオラァッ!」

「あっ、こら馬鹿!」

清正は正則を止めようと肩を掴んだが時すでに遅し、正則の手によって三成の部屋の襖は勢い良く開かれていた。


スパァンッ! と響いた音に、辺りは一斉に静まり返る。



「ま、正則様? 清正様まで……」

「んなっ!? 椿!? み、三成ぃ! なぁーんで椿に飯食わせてもらってんだよ!」


ずんずんと遠慮なしに部屋に入る正則を、三成は心底嫌そうに睨みつけた。

「……黙れ、馬鹿。頭に響く」

「ずりぃ。ずりぃだろガチでっ! なあ清正!?」

「え、ま、まあ確かに……」

「だろ!? なあ椿っ椿! 俺にも、俺にもー! あーん!」


椿に向かって大口を開ける正則に、椿は匙を持ったまま戸惑った。


「でも、正則様。これは三成様の匙ですよ?」


「はあ?」

「馬鹿。少しは考えろ」


清正が呆れかえってうなだれる。

つまりは、間接的にではあるが口付けということになる。
数秒かかってそれに気付いた正則の怒りの矛先は、やはり病人である三成に向かう。



「三成てめぇーっ! 頭デッカチのくせに抜け駆けしやがってー!」

「唾がかかる。間近で騒ぐな」

「くっそおーっ! 相っ変わらずむかつく野郎だな!」

「あ、あの、正則様? お粥ならまだ余ってると思うので、そちらを……」

「違うんだよ! それじゃあ意味ねぇんだよっ! ちくしょーっ!」


椿が首を傾げて困っていると、ねねがやってきた。

「三成ごめんね! あたしったらお水渡すの忘れちゃって……って、こらぁ! またケンカしてるの!?」

「おねね様! 聞いてくださいよっ! 匙が三成に粥で椿をーっ!」


悔しさと怒りで興奮している正則の言葉は滅茶苦茶だ。だが、ねねはそんなことにも構わず、腰に手を当ててこう言った。



「言い訳しないっ! こうなったら四人まとめてお説教だよ!」

「ええぇー!?」



「なっ、おねね様!? 俺もですか!」

「あれ、私も……?」

とんだとばっちりだ。



三成は粥を全て平らげると、おろおろする三人を横目に、深く息を吐いた。





風邪が治った後も、しばらく三成の機嫌が悪かったのは言うまでもない。


2011/08/05


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