「半兵衛様、やっぱりここに……って、また寝てる」

城の屋根上、あどけない表情で居眠りする半兵衛様をまじまじと見つめた。
……こうして見ると、半兵衛様は本当に端正な顔立ちをされている。女の子顔負けの滑らかで柔らかそうな肌と長い睫。正直羨ましい。

……いや、むしろずるいとさえ思う。天は二物を与えずと言われているはずなのに、一体どうなっているのだろうか。
とても口になんて出せないけれど、心の中で言うくらいなら許されるはず。
――天才と謳われる程の優れた頭脳を持っていながら、何故あなたはそんなにも可愛らしいのですか。

暴走する脳内は止まるところを知らず、私はすやすやと寝息を立てる半兵衛様に、小さく呟いた。


「……あんまり無防備だと、襲われちゃいますよー」

主に、私に。……なんて、何を馬鹿げたことを言っているんだ私は。自分に自分で突っ込んでいると、不意に腕を引かれた。

「えっ……!?」


体制を崩した私は、ちょうど半兵衛様に覆い被さるように倒れ込む。


「……いいよ? 襲っても」


間近で天使のような微笑みを浮かべる半兵衛様に、私は声にならない叫びを上げながら飛び退いた。


「な、ななな何を言って……っというか、寝たふりしてたんですか!?」

半兵衛様は残念そうに身を起こし、悪戯っぽく口角を上げた。

「人聞きが悪いなあ。たった今起きたんだよ」

嘘だ。絶対嘘だ……! 疑いの眼差しを向けるが、効果は無きに等しいようだ。


「それにしても、椿がそ〜んなに俺を好いているとは思わなかったなあ」

「えっ!? 私いつ口に出してました!?」

「あ、本当にそういうふうに思ってたんだ」

「なっ……」

「まあ椿の顔見れば一目瞭然だけどねー」

「…………っ!?」


面白いくらいに取り乱す私を哀れんだのか、半兵衛様は冗談だよ、と笑った。

いやそう言われましても、最早どこからどこまでが冗談なのかすらわかりません……!
半兵衛様はそんな私に向けて両手を広げ、意地悪く笑んだ。


「椿。おいで」

不覚にもときめいてしまった私は、悔しいけれど既にこの小悪魔の虜なんだと実感した。


2012/01/19


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -