深々と降り積もる白い雪。一層冷え込む明朝にも関わらず、正則は一人はしゃいでいた。


「うおぉ、冷てぇ!」

「正則、この寒いのに元気だな……」

「馬鹿だからな」

フン、と冷めた笑みを浮かべる三成の顔に、何かが当たる。べしゃり、と間抜けな音を立てて崩れ落ちる雪玉。
三成の鼻に残った雪を指差し、正則はゲラゲラと大笑いした。


「……貴様……」

憤慨した三成は、顔を手で払い、足元の雪をかき集める。一際固く丸めたそれを、正則目掛けて力一杯投げつけた。

「あだっ! ……いってぇ〜! おい頭デッカチ! 今ガチで投げただろ!?」

「さて、なんのことだ」

「てっめぇー……おりゃっ!」

またも顔目掛けて投げられた雪玉を、三成は難なく避ける。

「そう何度も当たるか、馬鹿」

正則は悔しそうに舌打ちし、新しい雪を丸め始める。三成も負けじと雪玉を作っては投げ、多数の雪玉が行き交った。
その様子を、離れた場所から眺める清正。大きく吐いたため息が、白く染まる。


「ガキの頃から変わらないな、あいつら」

「あれ、清正様は混ざらないんですか?」

「……椿。いつの間に」

「朝から随分賑やかだったもので」


見に来ちゃいました。にこりと笑む椿に、清正は呆れたように苦笑した。

「いや、俺は……」

べしゃっ。頬に当たった雪玉に、清正が動きを止める。


「あ、やべっ。清正、今のはわざとじゃ……って、うおっ! 危ねー!」

目にも留まらぬ早さで飛んでいった雪玉を、間一髪で避ける正則。その額には、冷や汗が浮かぶ。

「動くな馬鹿! そこにいろ!」

「動かなきゃ当たるだろっ! ……いてっ! おいこら頭デッカチ! 何どさくさに紛れて投げてんだよ!」

「貴様がぼけっとしているからだ」


悪態をつきながらもどこか楽しげに騒ぐ三人を、椿は笑顔で見つめていた。
寒い寒いと肩を震わせていた三成や清正でさえ、正則との雪投げに熱中している。

「なんだかんだ言っても、あの三人って似てるなぁ」

くすりと笑みながら、椿は一人呟いた。


――結局勝負はつかず、朝餉の席には疲れはてへとへとになった三人の姿があったという。


2012/01/06


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