襖は勢い良く開け放たれ、スパアンと大きな音が響く。 息を切らし、肩を上下させる三成を、椿が呆然と見上げた。 「……三成様?」 「……お前が、怪我をしたと……」 いつもと変わらぬ様子に、三成はその場でがくりと膝を落とした。任務の最中に怪我を負ったと聞いて飛んできたのだが、当の本人に苦しんでいる様子はない。 「あ、いえそんな、たいした怪我では……」 ただ、少し油断してしまったようです。言いながら、肩を押さえて苦笑する。 「……本当か」 「ええ」 笑顔で頷かれ、三成はそっと肩に触れた。 「つ、っ……」 痛みに呻く椿に、顔をしかめる。 「……見せてみろ」 「だっ、大丈夫です! 薬師に治療は受けましたし、ひと月もすれば治ると……っ」 椿は必死に誤魔化そうとするが、三成に抱きすくめられ、言葉を詰まらせた。 「無茶はするなと、言ったはずだ」 「……はい」 「あまり心配をかけさせるな、椿」 抱かれる腕に力がこもり、三成の想いが痛い程伝わる。椿は切なげに眉を寄せた。 自分が未熟でなければ、こんなことにはならなかったはず。 「……すみません」 「わかればいい」 ――肩の傷は、深い。 炎症を起こし腫れ上がる傷口を見て、医者は首を振った。治る見込みは薄い、と。 それを今、口にすることなど誰ができようか。 些細な傷が命取りになることくらい、わかっていた。わかっていたのに。……医者が告げた残酷な真実が、頭の中を駆け巡る。 椿はただ、三成の腕の中で唇を噛み締めた。 2011/12/25 ← |