朝方、冷たい風が頬をなで、椿は体を震わせた。手のひらに吐き出した息は白い。

「……今日は冷えますね」

「馬鹿。そのような薄着で外に出るからだ」

文句を言いながらも、三成は着ていた羽織を椿にかけた。

「え、あの三成様」

「貴様に風邪を引かれると迷惑だ。黙って着ておけ」

「それでは三成様が風邪を引かれてしまいます」

「俺はこの程度で風邪を引くほど馬鹿ではない」

フンと腰に手を当てるが、やはり寒さには勝てぬようで、小さくくしゃみをする三成。椿は慌てて羽織を脱ぎ三成の肩へと戻す。

「……おい」

「私は大丈夫です。それに」

椿は三成の腕に体を寄せる。

「こうした方が暖かいですし」


照れ笑う椿に、三成は戸惑いがちに指を伸ばした。指先が触れ合い、お互いの指が絡む。腕から、手のひらから、確かに伝わる三成の体温に、椿は微笑んだ。

「寒い日も、良いものですね」

「……たまにはな」

「そろそろ、戻りましょうか。すぐお茶を出しますね」

「茶なら俺が入れる」


意外な申し出に、椿は数回まばたきを繰り返す。そして、嬉しそうに笑んだ。
「嬉しいです。三成様の入れるお茶は美味しいので」

「大して変わらんだろう」

「変わりますよ。三成様のお心がこもってますから」

「またこいつは、恥ずかしいことを真顔で……」

「え? 何か仰いました?」

「なんでもない。さっさと来い」

三成は繋いだままの手を強引に引っ張る。椿は一瞬体制を崩しつつも、ずんずん歩いていく三成の後を小走りで追った。


2011/10/21


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -