存在否定による肯定 | ナノ
存在否定による肯定
『気に入らねえ』
高校一年の春。
俺が唐突に言われた言葉…
初対面の人間に、そんなことを言われたのは初めてだった。
一瞬、耳を疑った。
この俺が人間に拒否されるなんて!
今までに俺に嵌められ、俺の本性を知った上で拒絶する人間は、何百、何千と見てきた。
皆同様に、最初は俺の外面に騙されるんだ。
自分で言うのもなんだけど、口を開かなければ、見た目はそんなに悪くないからねえ…俺は。
いつもいつも同じことの繰り返しで、正直飽き飽きしていたよ…
そんな俺がやっと見つけた“非日常”は、人間が本来持つべき力を越えてしまった化物…
平和島静雄だった。
「いいいいいざああああやあああああ!!!」
「やあ、シズちゃん。今日も素晴らしく不機嫌そうだねえ」
「手前の所為だろ!このノミ蟲があああ!!」
「何で俺の所為なのかなあ?何でも人の所為にするのは良くないよ、シズちゃん」
「手前の所為だろ、あ゙あ゙!?手前の存在が“気に入らねえ”からだよ!!」
『気に入らねえ』
その言葉を聞くたび、俺は身体がゾクッと奮えた。
断っておくが、別に俺がマゾなわけじゃない。
ただ――俺に嵌められて、俺の本性を知ってもなお、畏れずに立ち向かい、それによって俺の存在を“肯定”している。
無意識にそれをしている彼が、俺は愛しい!
だが、その行動自体が、俺が彼を化物とする理由なのだ。
人というのは、怖れるものを目にすれば、本能的にその目を背け、その存在を否定しようとする。
それ故、彼は…他の、俺が愛する人間とは違う…!
だから俺は、シズちゃんが…
大嫌いなんだ。
END.
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