甘えん坊な彼に | ナノ

甘えん坊な彼に


――甘楽さんが入室されました――


《どもー☆みんなのアイドル甘楽ちゃんの登場です!》

【甘楽さん、ばんわー】

《あれ?田中太郎さんだけですか〜?》

【はい^^;】
【僕じゃ不満ですか(笑)】

《そんなことないですよう〜ww》

【あ、そうだ】
【甘楽さんに相談したいことあるんですが…】

《何ですか〜?》

【明日、友達と出かけることになったんですが】
【どんな服を着て行ったらいいのか分からなくて…】

《…友達って、もしかして女の子ですか?》

【え、ええ、まあ…】

《いいですね!青春ですね〜w》

【青春って…甘楽さんはもう青春終わってますもんね(笑)】

《えー酷いですよ!もう!》
《私は永遠の21歳ですから!☆》

【どのみち青春終わってませんかww】

《そんなことないですよう!プンプン!》



 【内緒モード】
 【ところで、臨也さんって、いつも同じあの格好なんですか?】

 《そうだね、アレが一番気に入ってるし、楽だからね》

 【今もいつもの格好なんですか?】

 《今?今は裸だよ》

 【!?】

 《どうかした?》

 【い、いえ…】
 【今、お風呂中とかですか?】

 《いやーん☆田中太郎さん》
 《セクハラですよ!》

 【いや、セクハラって…】

 《まあ、冗談はさておき》
 《今はベッドの中だよ》

 【え?】

 《ちなみに隣には》

 【隣には…?】

 《ここから先は有料だよ。どうする?》

 【え、遠慮しておきます…】



《すみません、そろそろ落ちますね〜☆》

【おつですー】

《あ、デートのときの服装は》
《年齢相応の爽やかな感じにまとめると》
《相手に好印象を与えると思いますよ☆》

《間違っても、バーテン服なんて選ばないこと!》
《それでは☆》


甘楽さんが退出されました。





「おい」


俺のベッドに我が物顔で寝転がっている背後の男から声をかけられた。

ベッドのシーツは波打ったように乱れていて、辺りからは事後特有の独特な匂いが漂っている。


「何かな?シズちゃん」


顔だけそちらに向けると、くすんだ金髪の男―平和島静雄がムスッとした顔でこちらを睨んでいた。

俺は右手に、いつもの黒い携帯を握っており、その画面には、先ほどまで会話していたチャットルームのページが開かれていた。


「携帯なんか弄ってないで…こっち向いてろよ」


普段の彼からは想像もつかない可愛らしい発言を聞き、思わず顔がにやけてしまった。


「シズちゃんって意外と甘えん坊だよね」

「うるせえ」


彼の罵倒を聞く前に、俺は隣にいるシズちゃんに抱きつき、彼の額にキスを落とした。


いつもの彼ももちろん愛しているが、甘く溶けた彼もまた心地がよい…





END.



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