どうしてこうなった | ナノ
どうしてこうなった
静雄と一旦別れようとしたのには理由があった。
私は罪歌についての情報を集めるため、不本意だが情報屋である折原臨也の元へ訪問しなければならなかったのだ。
もし静雄を連れて臨也のところへ訪れれば、どうなるかなんて分かり切っている。
しかし、タイミング悪く静雄の上司である田中トムが、今日はもう上がっていいと言いに来てしまい、静雄もなかなか引き下がらなかったため、どうしても断り切れず、彼を連れて来てしまった。
「セルティ、どこまで行くんだ?」
『もうすぐ着くよ。ちょっと待ってて』
「ああ」
エンジン音のしないバイクを走らせ、新宿へ向かった。
夜でもあまり暗さを感じさせない街並みを横目に、馬の嘶きが聞こえるバイクをしばらく走らせ、高級マンションの前で止まった。
『着いたぞ』
「ここは…ノミ蟲のマンションじゃねえか」
『静雄、知っていたのか?』
「…まあ、な」
『そうか』
静雄の曖昧な返答が少し引っかかったが、敢えて突っ込まないでおいた。
まあ、二人も不本意だろうけど、結構長い付き合いだから、私の知らない間にいろいろあったのだろう。
そして、静雄と共にマンションの中に入り、マンションの最上階にある臨也の部屋の番号を入力し、インターホンを押す。
『はい、どちら様ですか?』
『私だ』
『ああ、セルティか!ちょっと待って、今開けるよ』
映像付きで本当に良かったと思う。
音声だけだったら、首が無い私はいつまで経っても部屋に入れないだろう。
最上階までエレベーターで上がり、なかなか立派なドアの前に立ち、チャイムを鳴らす。
「やあ、いらっしゃ…何でシズちゃんがここにいるのかな?さっきは映ってなかったじゃない」
目の前に静雄の姿を確認し、あからさまに臨也の態度が急変した。
『えっと、静雄はさっき、隣に居たには居たんだが…映らない位置に立ってたんだ』
「へえ…でもシズちゃんがわざわざ俺の家まで来る理由が全く分からないんだけど」
「手前を殺りに来たに決まってんだろ?臨也くんよお…」
(やはりこうなったか…)
セルティは心の中で後悔したが、後悔先に立たず―あのときこうしておけば良かったと悔やんでも、今更取り返しがつかないのだ。
しかし予想外なことに静雄の言葉を聞いた臨也はと言うと…
「俺を犯りに来たあ?ハハハッ!シズちゃんのくせに、笑わせるねえ!」
「ああ?!覚悟しろよノミ蟲!」
『…ん?』
「おいで!腹上死を味あわせてあげるよ!!」
「上等だあ!!犯り殺してやんよ!」
そう言うと、静雄は臨也に案内され、ズカズカと部屋の中に入っていく。
文字で表すと明白だが、何だかおかしな方向に事が運んでしまったようだ。
『…あれ?なにこれ』
二人が寝室に入っていき、ばたんと勢いよく扉を閉めたのを見届けると、セルティはPDAにこう綴った。
『どうしてこうなった』
その後、臨也の寝室から二人とも出て来そうもないと判断したセルティは、日を改めることにしました。
(帰ろう…)
END.
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