会いたい | ナノ

会いたい


『ねえ、今すぐ会いたい』

――そう携帯に打ち込んでは、消す、消す…消す。

代わりに『今、池袋に居るよ。』と打ち込みメールを送信する。


宛先は“平和島静雄”。


『会いたい』なんて言えない…
素直になんてなれない。

――あまのじゃくな俺だから…


『池袋に居る』って教えたら、シズちゃんが俺を捜し出して、必ず会いに来てくれるから…
卑怯な俺は、いつも同じ手を使ってシズちゃんに会いに来てもらう。

でも、見つかったら見つかったで、いつも喧嘩が始まる。


――俺は、本当は喧嘩なんてしたくないのに。
ただシズちゃんに会いたいだけなのに…

…シズちゃんが好きなだけなのに。


――俺はあまのじゃくだから。

全部裏目に出てしまう…
思っても無いことまで口にしてしまうんだ。


もう嫌だ。
こんな性格…もっと素直になりたいのに!
素直にシズちゃんに好きって言えたらいいのに…

幾度となくそう思い続けてきた。


しかし、性格というものは、そう簡単に変わるものではなく…
高校時代に、シズちゃんに一目惚れしてから…もう何年も悩み苦しんでいた。


何度もシズちゃんに好かれる性格になろうと努力はした、でも、結局は全て無意味なものでしかなかった。

だから、変えようという気ももう失せた。
俺の性格はもう一生このままなんだと決め付けた。


…ずっと、シズちゃんと笑い合ってみたかった。
苦笑いでも、愛想笑いでも、嘲笑でもない…本心から来る笑顔。
俺にもあの芯の通った真っ直ぐな瞳で、真正面から目つめて、微笑んで欲しかった。


でも、俺の性格、商売…色んな面から見て、無理なのは十分承知。


せめて…いつでもシズちゃんの心の中を俺で占められるように、俺はシズちゃんにとって憎しみの対象となった。



「臨也あああ!!池袋に来るんじゃねえ!!」

――ほら来た。

俺が池袋のどこに居たって何をしてたって、必ず見つけ出してくれるんだ。
俺の愛しいシズちゃんはさ。


――あまのじゃくな俺だから。

たまには、『嫌い』と打って消して、『好き』と書いた――“間違えた”メールを送ってみようか。


そうしたら君は、どんな返事をくれるのかな?





END.



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