奪っちゃった☆ | ナノ

奪っちゃった☆


―キーンコーン
    カーンコーン―…


今は昼休み。
午前中の授業が終わり、生徒達は席を離れて弁当を持ち寄り、友人達と歓談している。

そしてこの時間には、臨也、静雄、新羅、そして門田の四人が屋上に集まってくる。
いつもこの四人が集まってくるので、その他の生徒は屋上には滅多に寄り付かない。

まず、あの折原臨也と平和島静雄が一緒に居る時点で、近付くことが出来る者が限られてくるだろう。

そして、この二人の喧嘩の仲裁が出来るのは門田京平と岸谷新羅だけだった。


まあ、新羅は間に入って止めることは出来ないので、仲裁というより傍観者と呼ぶ方が合っているかもしれない。

もう一人の仲裁者、門田京平は兄貴肌で人から好かれやすく、臨也からは『ドタチン』と呼ばれている。


そんな門田は、屋上のベンチに腰掛け、三人が来るのを待っていた。


「ドタチン」


不意に背後からあだ名で呼ぶ声がした。
この名前で呼ぶのはただ一人だけだった。


「ああ、臨也。早かったな。静雄と新羅ももうすぐ来ると思うぞ」

臨也は「そう…」と、俺の言葉が耳に入ってないように、内容に興味が無さそうに、次の言葉を紡ぐ。


「ねえ、ドタチン」

「何だ?」


「ちゅーしよ、ちゅー」

「はあ?何言って…」


冗談だと思って聞き返そうとしたその瞬間、既に臨也は俺の膝の上に乗っていた。

そのまま、男にしては端正な顔立ちが近付いてきたと思ったら、唇に何かが触れる感触を覚えた。


「ん…っ」

「…っ!」


一瞬触れたと思ったら、すぐに離れていった。
それから、臨也は俺の膝の上に座ったまま微笑んだ。


「奪っちゃった☆」

「っ…!!」


今、目の前の奴にされたことを再度認識させられ、顔が熱くなる。


「ドタチン、顔真っ赤だよ?」

「お前なあ…」


人にキスしておきながら、涼しい顔しているコイツが、少し憎らしい。


「そんなに嫌だった?」


そう上目遣いで尋ねてくるコイツを妙に可愛らしいと思ってしまって…


(嫌じゃなかったから困ってんだ…!)





TO BE CONTINUED.



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