逃避行 | ナノ





「席替えすんぞー。ちなみに全て俺の独断で決める」

「えええそりゃないだろ川ちゃん!」

「お前らがうるさいのが悪いんだよ、今回静かにしてれば次はくじでやってやるから」

「ちぇー」


どうだっていいから早く始めればいいのに。心の中で毒づきながら嫌だね、と話しかけてきた友達にそうだねと適当に返す。好きな人でもいればまた違ったのだろうけど、私にとってそれは別に特別なことではなくて、正直どうだっていい。


「…んじゃ藍川の隣は柳な」


けれどまた、隣の席になってしまったこの柳という男が厄介なやつだった。



「誕生日は?」

「六月十一日」

「ということは双子座か。趣味は?」

「読書」


私が突っ伏そうとした寸前声を掛けられて、名前と血液型と身長を訊かれ今に至る。え、何、何なのこれどういうこと。


「ふむ。…因みに、ああこれは俺の個人的質問だが…、よく読書をしているが好きな作家はいるか?」

「…いない。恋愛小説が好きなだけ」


個人的質問って何だ。今までのは公的質問だったのか。ていうか公的質問て何だ。訳わかんない。


「そうか。では質問に戻ろう、体重は?」



ぷっちん。

今までの質問は適当なことを言って流してきたがこれはおかしい。私の堪忍袋の緒がちょっと切れかけるのも無理はないんじゃないだろうか。


「柳くん」

「何だ?」

「柳くんってさ、ストーカー?」






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