:下品注意

 埃が酷く舞っていると思ったら、雪が陽光の中降っていた。そんな話をすればあいつは笑ってロマンがないとか言うんだ。
 ロマンってなんだ。そんなものの前にお前は色気を身につけろ。


 机に突っ伏した後頭部。隣に座り挨拶すれば、唸り声が返ってきた。まあ朝からテンションが高いのは秀くらいだろうしな。恐々手帳を確認し、ため息。朝というより、しばらくは機嫌が直りそうにない。あまり関わらないでおこう。
 考えた直後、開かれたドアから生徒会長の声が入ってきた。続いて姿を表す本人。

「石川くん、国語辞典持ってる人いるか聞いてもらえる?」

 教室の机は、クラス替えがあってから変わらず出席順に並んでいる。入口の真横に席がある俺を、仙石は案内役かなんかだと思っているのだろう。

「あっ俺持ってる」
「そうか、ありが……なんだそれ」
「え? 国語辞典ですけど」

 仙石の視線が俺からズレていたことには気づいていた。でもわかるだろう仙石、触れちゃダメなんだ。お前はちゃんと空気が読める子だって俺は知ってるぞ。

「これじゃないわよ。朝から女子が、足広げてグータラしているのが見える」

 背後から素早く足を閉じる音が聞こえた。そして小さな唸り声。まるで警戒心剥き出しの獣だな。

「まるで警戒心剥き出しの獣だな」

 言っちゃった。ってか言っちゃうんだ。そして極めつけといわんばかりに、最後のひとことも入れてしまうのだ。

「生理かよ」
「「ばかーー!!」」

 河野さんから、仙石はデリカシーがないと聞いていた。実際一緒に遊んでいても、ときどき宮村たちの神経に触れるのを見ている。

「あっ、悪いな。冗談のつもりだった」

 そう、いつだって悪気ないのがお前のいいところであり、悪いところだよな。

「ところで、石川くんはなんで知ってたんだ?」
「……」

 背後からじっとりとした視線が突き刺さる。
 みなさん、覚えていてください。人付き合いにおいて気づかいは大切です。しかしそれは気づかれないからこそであり、気づかれれば大小様々ですが相手に不快な思いをさせてしまいます。
 俺は仙石に向かって、後ろから放たれる殺意をそのまま放った。

「「ばかーー!!」」

 女子の生理日にはちょっかいだすな。

「だからって予定日把握してるとか引くわ」
「ロマンどうこうよりあんたにはデリカシーがない」

 言われたい放題だな俺。

13.05.22
―――
私も引くわ……

リクエストありがとうございました。冬瀬さんのみご自由にお持ち帰りください。

 
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