寒い部屋でひとり、夜空を見上げた。澄んだ空に浮かんだ星の瞬きが、わたしの空虚な心をちりちりと痛めつける。目を閉じてベッドに横たわれば、わたしの心は夜の波に飲み込まれていく。蓮二と過ごした幸せな時間は、いつしかわたしを苦しめるだけの残酷な刃になった。彼がいない夜に、わたしは一体なにを想えばいいのだろうか。
「君はブラックコーヒーみたいだね」
そう言ったわたしに困った顔をした彼が忘れられない。ではお前はミルクだな。そう放ってやさしく笑った顔を忘れられない。
「ふたりを足してカフェオレにしよう」
「そうだな。他の何者とも打ち解けないが、お前とだけ混ざりあえれば、それでいい」
混ざりあった味を忘れられないわたしは、もう誰とも混ざれない。あんなに好きだったのに、どうしてさよならをしなくてはならなかったのたろうか。願うならば、幸せなあの頃に戻りたい。そしてもう一度、愛してほしい。
壁にもたれかかり、鳴らない携帯を見つめた。わたしの隣に君はもういない。マグカップに注いだブラックコーヒーが、泣くように小さく震えた。