見るからに不機嫌、そんな表情を浮かべそっぽを向いている十代さんにどうしたものかと思案する。
十代さんとデュエルすると約束したのだが、急用が入り出来なくなったのだ。
普段はこんなことで怒ったり拗ねたりはしない人なのだが、今回は余程楽しみにしていたのか機嫌を損ねてしまったようだ。
少し困るが嬉しくもある。それほど自分とのデュエルを楽しみにしてくれていたのだと思うと自然と頬が緩んだ。
「何笑ってんだよ」
「いえ、笑ってなんて!」
こちらを睨み付ける十代さんに慌てて手を振ると再びそっぽを向かれてしまう。
「…どうしたら、許してくれますか?」
このままそっぽを向かれていては悲しい、どうしようもなくてそう問いかけると十代さんはこちらを一瞥した。
「遊星、何でもするか?」
「はい」
許してくれるなら本当に何だってします、そう気持ちでひとつ頷くと十代さんは薄く笑う。
「じゃあ、キス百回で許してやる」
十代さんの言葉に思わず固まっていると、にっこりと笑って十代さんが顔を近付ける。吐息が唇にかかる。
「遊星」
名前を呼ばれ眩暈のような感覚がする。
「…善処します」
百回は難しいが十代さんの気が済むまでは。
十代さんが両目を閉じる。そっと頬に手を添えて、まずは一回目のキスを落とした。
END
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