「遊星」

作業の途中で名を呼ばれ振り返り、はい、と返事をしようとしたがそれは唇を塞がれ叶わなかった。
突然のことに驚いて目を見開いていると、ちゅっ、という音ともに柔らかな感触が離れる。

「っ…じゅ、十代…さん?」

驚きながら指で唇を押さえながら目の前にいる十代さんを見つめるときらきら輝くような笑みを浮かべられた。

「キスしたくなったからしたんけど駄目だったか?」
「い、え……駄目じゃない、です」

そんな笑顔で言われたら駄目だなんて言えない。
まあ、十代さん相手なら絶対に言わないが。

「なら良かったぜ」

満足そうにそう言って笑う十代さんに小さく苦笑し、作業へ戻る。

「遊星」

暫くして再び名前を呼ばれ何だろうかと、振り返るとまた唇を塞がれる。
まさかまたされるとは思っておらず、完全に油断していてするりと舌が侵入してくる。

「んっ」

頭が混乱してくる、十代さんが何をしたいのか分からない。
このままだと理性が飛んで十代さんをどうにかしてしまいそうだ。
それは駄目だと何とか離そうと押し返したが十代さんが袖を掴みバランスを崩してしまい、十代さんに覆いかぶさるような体勢になってしまった。

「っすみません!」

琥珀色の瞳がじっとこちらを静かに見つめていて、慌てて退こうとするが十代さんがしっかり両袖を掴まれた。

「十代さん?」
「良いじゃん、別にこのままで」

あっさりと言う十代さんに慌てる。

「このまま、だと…まずいと思うんですが」

目を逸らして呟くように言うと十代さんはにこりと笑う。

「俺はまずくないぜ、何なら遊星の好きにしてくれた方が嬉しいんだけどな」

好きにしてくれ、なんて。
そんなことを言われたら理性が揺らぐ。

「遊星」

もう一度名前を呼ばれ触れるだけのキスをされ、理性は脆くも瓦解し、十代さんは満足そうに笑っていた。



END

title:確かに恋だった
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