※マンガ版
じっと無遠慮な視線がこちらに向けられている。
これが女性の熱視線ならば良いのだが、男だと話は別だ。何が悲しくて男の熱視線をうけなくてはいけないのか。自然と深い溜め息が唇から零れる。
「一年生くん」
「遊城十代だ!何回言ったら分かるんだよ」
呆れたように言う一年生くんに少しムッとしてしまうがここで怒るのは年上としてどうかと思うので、小さく笑みを浮かべるに留める。
「男の名前なんて覚える必要ないからね」
それを聞いて一年生くんは盛大に顔をしかめた。
本当に明日香の兄チャンなのか?
そう思ってじっと見ていると溜め息を吐かれた。
「一年生くん」
何度か名前は名乗ってるとは思うが未だに一年生くん、と呼ばれる。
「遊城十代だ!何回言ったら分かるんだよ」
俺が思うのも何だけどこの人記憶力ないじゃないかと思う。
そんな事を思っていると、小さく笑みを浮かべられる。
「男の名前なんて覚える必要ないからね」
いっそ清々しいなと思うがちょっと…いや、かなりムカつく。自分にはちゃんとした名前があるのだからそっちで呼んでほしいものだ。
眉を寄せ、顔をしかめると再び深い溜め息を吐かれた。
本当に何が悲しくて男のしかめっ面を見なくてはいけないのか、溜め息が零れる。
「あんたさ、」
「あんたじゃない、天上院吹雪だ、フブキングでも良いけどね」
「俺だって一年生くんじゃねーよ、遊城十代だ」
琥珀色の目がまっすぐこちらを見つめる。
ああ、こうして真正面から見た事がなかったけど意外と綺麗なものだ。と、何を考えているのか。
首を緩く左右に振ると踵を返す。
「用がないならボクは行くよ」
そう言って歩きだそうとすると、一年生くんの声が背中にかかる。
「絶対名前覚えてもらうからな!」
ぴたりと動きを止めて僅かに思案し、肩越しに振り返った。
「さっきも言ったけど男の名前なんて覚える必要ない、だから君の名前は覚えないよ」
そう言って手を振りその場をあとにする。
遊城十代、まったくなぜか覚えてしまったよ。だが本人に言う気はない。いつまでも一年生くんと呼ぼうと決め、僅かに微笑を浮かべた。これから彼は自分に名前を覚えてもらおうと躍起になってくるだろう。そう思うとなぜか楽しいような気持ちになり更に笑みを深めた。
END
title:ARIA