「十代さん、結婚しましょう」
遊星にぎゅうっと両手を握られ真剣な表情で言われた一言に目を瞬かせた。
「…は?」
何を言われたか理解出来ず首を傾げる。いや、何を言われたかは分かっている。結婚を申し込まれた、つまりプロポーズされた訳だが。
背には壁、目の前に遊星。しかも息がかかるくらい近い。これでは落ち着いて話す事も笑って適当にはぐらかす事も出来ない。
どうしたものかと思案していると、遊星が再び真剣に言う。
「結婚しましょう」
「そんな…いきなり言われてもな、何で結婚なんだ?」
問いかけると遊星は微笑を浮かべる。
「六月に結婚をすると幸せになれるといわれるからです!」
にこにこと嬉しそうに言う遊星に苦笑を浮かべる。
大体結婚とか普通に考えて無理だと思う、男同士だし、六月に結婚だってもう六月も半ばだというのにとてもじゃないが無理だ。
とにかく遊星を説得しなくてはと思い、小さく息を吐いて遊星をまっすぐ見つめる。
「遊星、男同士で結婚とか無理だろ」
「大丈夫ですよ、今の時代同性の結婚は珍しくないですから」
そうなのか?遊星達の時代では珍しくないのか、何て時代だ!
「あー…六月に結婚って無理だろ?だってもう月の半分は終わってるし」
「その辺も大丈夫です、式場、披露宴会場、衣装、結婚指輪…全部用意してあります、あとは十代さんがサインしてくれれば晴れて俺たちは夫婦です!」
遊星の差し出された結婚届に思わず脱力しそうになる。
そう言えば、ここ半年くらい何か忙しそうにしてたなあと思っていたが、まさか結婚準備をしていたとは。
深い溜め息を吐くと遊星の握っている手の力が緩まる。
「遊星?」
「…俺と結婚するの嫌ですか?」
「っ…嫌じゃねえよ!…ちょっとびっくりしただけだ」
しゅんと肩を落とす遊星に小さく笑って答えた。
一つ咳払いし、まっすぐ遊星を見つめる。
「俺でよければ、よろしくお願いします」
一つ頭を下げると思い切り抱き締められた。
「絶対幸せにします」
「おう、期待してる」
遊星の言葉に笑みを浮かべ頷いて、抱き返した。
END
ジューンブライドネタ。