『相棒』
ふと後ろから呼ばれ振り返ると神妙な様子のもう一人の僕がいた。
「どうしたの?もう一人の僕」
カードの整理をしていた手を止め、首を傾げて問いかけるともう一人の僕は一つ深呼吸し目の前に正座した。
「もう一人の僕…?」
『生まれてきてくれて、ありがとう』
不思議に思い呼ぶと、もう一人の僕はとても優しい笑顔を浮かべて言った。
一瞬なにを言われたのか分からず、目を瞬かせた。
「な…何で…?」
『今日は相棒の誕生日だろ、だからだ』
「あ…」
そういえば今日、六月四日は自分の誕生日だ。
もう一人の僕がそれを知っていたのに少し驚いた、そういう話はした事がなかったし、杏子から聞いたのかもしれない。
『相棒』
呼ばれて思考を中断しどうしたの、と問うと小さく笑みを浮かべる。
『俺と出会ってくれてありがとう、大好きだ…相棒?』
もう一人の僕が不思議そうにこちらを覗き込む。
今自分は真っ赤になった顔を両手で覆っているからどんな表情かはもう一人の僕には分からない、というか見られたくない。
何ていうか、すごく恥ずかしい事をさらっと言われたような気がする。
嬉しいんだけど、恥ずかしくて堪らない。
ああ、顔が熱い。
『大丈夫か?相棒』
もう一人の僕の心配そうな声にそろそろと覆っていた手を離した。
「…大丈夫だよ、もう一人の僕」
小さく笑みを浮かべて言えば、もう一人の僕は安心したようにほっと息を吐く。
「あの、もう一人の僕」
『ん?』
「ありがとう、僕も大好きだよ」
そう言って、にっこりと微笑むと一瞬もう一人の僕はきょとんとしてから嬉しそうに笑った。
Happy birthday!
END
遊戯誕生日記念。
title:ARIA