半透明の腕が隠すように十代さんを包み込んでいる。左右違う色の瞳が冷ややかにこちらを見つめていた。

「なん、ですか?」
『キミと一緒だと十代の教育上よくない』

思わず固まってしまう、なぜカードの精霊にそんなことを言われなくてはいけないのか。
目の前の精霊、ユベルはそんなことを気にした様子もなくちいさな十代さんの頭を愛おしげに撫でている。触れ合うことは出来ないユベルだが十代さんは本当に撫でられているように嬉しそうに目を細めていた。
端から見ればほほえましい光景なのだが、先程のユベルの言葉が頭の中で繰り返される。

「…意味が分かりません、なぜ俺と一緒だと十代さんの教育上よくないんですか?」

問いかければユベルは肩を竦めると深い溜め息を吐いた。

『キミはね、十代と一緒だとかなりだらしない顔をしているよ』

ユベルはちいさな十代を撫でながらじろりとこちらを睨み付ける。

『気持ちは分からないでもないけど、今後は十代に近付かないでくれ』

そう言うと十代さんのちいさな手をとり、連れていってしまう。
十代さんは素直に手を引かれるままユベルとともにその場を去ってしまった。

「過保護すぎる…」

一人呟いた言葉は誰にも聞かれることはなかった。



END

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