ふんふんと鼻歌まじりにどこか浮かれた様子の幼なじみに青峰は首を傾げた。
「何浮かれてんだ?」
どこか呆れた声音で疑問をそのまま口に出す青峰に桃井は僅かに頬を膨らます。
「そんな呆れたように言わなくったっていいでしょ!」
「あー、悪ぃ悪ぃ」
まったく悪びれる様子のない青峰に桃井は小さく息を吐く。
「まあ、ほんのちょっと浮かれてたかもしれないけど…」
桃井の言葉に青峰は僅かに眉を寄せる。ほんのちょっと、というには無理があるだろうと青峰は思う。
「(浮かれて鼻歌歌ってたろ)」
今度は声に出さなかった。またうるさく言われるのはごめんだと思い、桃井の話の続きを促す。
「で、何かあったのか?」
青峰の言葉に桃井は目を瞬かせる。
「青峰君、今日何の日か知ってる?」
桃井のまっすぐな視線を受け、青峰は首を傾げ考える。
今日、というと一月の末日。特に思い当たることはなく、青峰は眉を寄せる。そんな青峰の様子に桃井は呆れたように息を吐いた。
「もう、今日はテツ君の誕生日じゃない!」
「…あー」
桃井に言われ初めて気づいた。今日が青峰の相棒である黒子テツヤの誕生日だったことに。
「青峰君、まさか忘れてた?」
桃井の言葉に青峰は頭をがしがしと掻いて目を逸らし、桃井は再び呆れたように息を吐いた。
せっかくなんだから何かテツ君にしてあげたら、と桃井に言われ青峰は考える。
相棒として、そして好いた相手として何かしてやりたいとは思うが、こういったことは自分は不得意だと自覚がある。そうなれば、もう本人に直接聞いてしまおうと決め、青峰は黒子を探すことにした。
「テツ!」
目的の人物を見つけ、青峰は名前を呼ぶ。呼ばれた黒子は振り返り、驚いたように目を見開く。
「青峰君、どうしたんですか?」
ゆると首を傾げる黒子に青峰は頬を掻きながらあーと言葉にならない声をあげる。
「青峰君?」
「…テツ、その今日誕生日だったんだな、おめでとう」
青峰の意外な言葉に黒子は目を瞬かせる、あまり青峰は他人の誕生日に興味はなさそうだと思っていただけに驚きを隠せない。
「…ありがとうございます、その嬉しいです」
黒子は自分の頬が熱くなるのを感じ、何となく青峰を見ていられなくなり視線を逸らした。
「で、だ…プレゼントなんて用意してねぇし、でもまあ日頃の感謝つーか、何かしてやりてーと思ってさ、テツ。何かオレにしてほしいこととかあるか?」
黒子は外していた視線をすいと青峰へと戻し、僅かに思案して笑みを浮かべる。
「じゃあ、ボクとバスケしてください」
今度は青峰が目を瞬かせる。
「そんなんでいいのか?」
いつもと同じじゃないのか、と青峰は思うが黒子は嬉しそうに笑って頷く。
「ボクにとっては最高のプレゼントですから」
「そーかよ」
青峰はぶっきらぼうに返して頭を掻きながら顔をそらした。真っ赤に染まった顔を黒子に見られたくなかったからだ。
黒子は青峰の赤く染まった耳を見て小さく笑った。