緑間はいつも通り朝食を食べながら『おは朝』を見ていた。
いつもなら自分の星座以外は聞き流してしまう緑間だったが今日は違った。

『本日、一月三十一日の運勢は…』

一月三十一日、と聞いて緑間が思い浮かべたのは黒子テツヤだった。何故だろうかと考えて以前、黒子に星座を聞いた時に誕生日も知ったのだ。
それが今日、一月三十一日。

「(今日誕生日だったか…)」

緑間と黒子は所謂お付き合いというものをしているが、なかなか恋人同士らしいことができないでいた。
主に緑間が気恥ずかしさや素直になれない性格の為だ。
何か黒子にしてやりたいと緑間は思ったが、自分の性格からして難しいだろうと思い小さく息を吐く。

『続いて蟹座!今日の運勢は絶好調!』

アナウンサーの声に思考を中断し、テレビを注視する。

『何でもうまくいく日です!今日の蟹座のラッキーアイテムは招き猫!』

アナウンサーの言葉に緑間は一瞬固まる。招き猫、確か黒子に貰ったものがある。今日は黒子に関することばかり思い浮かべてしまう。

「(黒子の誕生日だからか?)」

やはり何かしてやりたいと思い、緑間が考えているとアナウンサーの声が再び緑間の耳へと届く。

『続いて水瓶座!今日の運勢は要注意!』

いつもなら聞き流してしまう他の星座の結果。
黒子の星座に思わず聞き入ってしまう。

『何をしてもうまくいかない日です、ラッキーアイテムは必ず携帯してね!今日の水瓶座のラッキーアイテムは…』

緑間はじっとテレビの画面を見つめ、次の言葉を待った。




黒子は戸惑いながらも、緑間に指定された場所で待っていた。
朝、珍しく電話が来たかと思えば時間と場所を指定され待っているように一方的に言い渡された。

「(何なんでしょうか?)」

緑間が呼び出すなんて珍しいと黒子は思う、特に思い当たる節はなく首を傾げる。


「黒子」

名前を呼ばれ黒子が振り返ると片手に招き猫を携えた緑間がいた。

「緑間君」

黒子は微かに笑みを浮かべる。恐らく緑間が持ってる招き猫は今日のラッキーアイテムだろうと黒子は予想する。

「今日はどうしたんですか?」

いきなりで驚きました、と黒子は緑間を見上げながら僅かに首を傾げ問う。
緑間は黒子をじっと見つめ、眉間に皺を寄せる。

「…?」

黒子はそれなりに緑間との付き合いは長い、今の緑間の眉間の皺は不機嫌で出来ているものではないのが分かる。
何かを悩んでいるような、躊躇っているようなそんな表情を感じとり黒子はますます首を傾げた。

「緑間君?」

黒子が名前を呼ぶと緑間の肩がぴくりと揺れ、一歩足を踏み出した。

「黒子…」

緑間が固い声で黒子を呼び、緊迫した空気が二人を包む。

「こ、これをやるのだよ!」

そう言って緑間が黒子へと差し出したのは招き猫のマスコットだった。

「別に誕生日だからプレゼントというわけではないのだよ!ただ今日の水瓶座のラッキーアイテムが、こ…恋人と揃いのものだったから、たまたま俺が持っていたからやっても良いと思っただけないのだよ!」

緑間は一気にそう言うと真っ赤に染まった顔をそらした。黒子はぽかんと緑間と差し出されたマスコットを交互に見つめたあと、小さく笑った。

「ありがとうございます、緑間君」

黒子はそっと両手でマスコットと一緒に緑間の手を包む。

「…別に、たまたまだ」

緑間は黒子を見ずにぶっきらぼうに答えて照れ隠しのように眼鏡のブリッジを押し上げた。
その様子に黒子は愛しげに笑みを深めた。

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