綺麗に笑うその姿は抗いがたいものがあると黒子は感じる。
黒子は戸惑いながら目の前の人物と差し出されたモノを見つめる。黒子の視線を受け、目の前にいる赤司はますます笑みを深め、ずいと手に持つモノを黒子へと近付ける。

「テツヤ」

赤司に名前を呼ばれ、黒子の肩が微かに揺れる。黒子は赤司から視線を僅かに下げ、差し出されたモノを見る。
銀色のフォークに一口大のケーキが刺さっていて、スポンジとクリームに挟まれた苺の赤が鮮やかだ。
黒子は黙ってそのケーキを見つめる。今日は黒子の誕生日だ、恋人である赤司が祝うため用意したものなのだが、黒子としては普通に二人で食べたら良いと考えているが赤司は自分が食べさせたいと譲らない。

「テツヤ、口を開けて?」
「…ッ…」

甘い声でそう言われたら、黒子も否とは言いづらい。だが、まだ羞恥の方が勝り口を開けることが出来ない。

「…無理やり食べさせても良いんだよ?」

口移しで、と付け加え赤司はにっこりと微笑んだ。
黒子は頬を真っ赤にし、慌てて手で口を塞ぐと赤司を軽く睨む。
当の赤司は気にした様子はなく、相変わらずケーキを黒子に差し出し微笑んでいる。

「テツヤ、あーん」
「…あーん」

黒子は観念したように、口を開く。楽しそうに赤司は笑うと口へとケーキを運ぶ。
普段よりもより甘い味が口のなかにひろがる。黒子はますます顔が熱くなるのを感じながら、赤司をちらりと見れば綺麗な笑みを浮かべる。

「テツヤ、誕生日おめでとう」

赤司の笑みに黒子は一瞬見とれ、頬を染めながら嬉しそうに笑みを返した。

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