青峰は何度となく、口を開いては声を発することなく閉じた。
最近、青峰は何とも言えない気分になる時がある。それは同じ人物が関わっている、青峰の相棒である黒子テツヤだ。
黒子とふいに目があったときや、ほんの微かに笑みを浮かべたとき、青峰はわき上がる何かを口にしたくなるが、何を言いたいのか青峰自身分からない。

「(何だ、コレ)」

今まで感じたことのないモノに青峰は若干の苛つきを覚える。ひとつ舌打ちし、頭をがしがしと掻いているとあ、と後ろから小さな声がかかる。

「青峰君」

青峰が振り返ると、そこには先ほどまで思っていた人物、黒子テツヤがいた。
薄い色をした双眸が青峰をひたと見つめている。青峰は心臓が大きくはねたのを感じ、左胸を押さえた。

「…テツ」

名前を呼ぶだけなのに、青峰はひどく緊張する、そんな青峰の様子に気付くことなく黒子は傍に寄ると小さく首を傾げた。

「青峰君、大丈夫ですか?」

じっと青峰を見つめる黒子の目には心配の色が滲んでいて、青峰は内心首を傾げる。黒子に心配されるようなことはないはずだが、何だろうかと考える。

「顔が赤くなってるような…熱があるんじゃ…?」

黒子の指摘に青峰ははっと自らの頬に手を添える。
いつもより僅かに高い温度を感じ、青峰自身驚く。なぜ、と思いながらも黒子が言ったように熱があるのかもしれないが、心配をかけるのは嫌だし、体調は特に悪いとは感じない。
青峰はにっと笑ってみせ、黒子の頭をくしゃりと撫でた。

「大丈夫だ、熱はねぇよ」

黒子は青峰をじっと見上げて、何度か瞬きそっと微笑んだ。

「良かった」

ほっとした様子で、そして嬉しそうに笑う黒子に、青峰の心臓が再び大きくはねた。

「(っ、これって…アレだな…)」

青峰は黒子にじわりと更に赤くなる顔を見られないようそっと逸らした。
抱いていた感情が何なのか、青峰は気付いた。黒子に対して抱いていたものは友情以上のものだ。

「(テツを見るたびに言いたかったことって…)」

自身の気持ちに気付いてしまえば、何を言おうとしていたのか分かった。そしてその分、顔が熱くなるのも。

「こんなこと、恥ずかしくって言えたもんじゃねぇ…」

ぼそりと呟かれた言葉は黒子に聞かれることはなかった。



END

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