はあ、と吐いた息は白く、見上げた空は鈍色で今にも雪が降りだしそうだ。
冷たい空気が容赦なくさらけ出されている顔や手をさし、指先がかじかむ。
「…寒ぃ」
手に息を吹きかけ、擦るがすぐに冷気に熱を奪われてしまう。それでも何もしないよりはと、息を吹きかける。
「…っ、十代さん」
呼ばれて振り返ると肩で息をする遊星が立っていた。遊星の息も白く染まっている。
「お待たせしてすいません」
「そんなに待ってないし、気にすんな」
にっと笑みを浮かべると遊星はほっとしたように笑みを返した。
遊星はふと何かに気付いたように眉を寄せ、じっと見つめてくる。
「どうしたんだ?遊星」
「十代さん…その格好で待っていたんですか?」
遊星の言葉に自分の格好を見回す。別段、変なところはない。いつも通りの格好だ。
首を傾げて見返すと遊星はそっと手を包むように握った。
「寒かったでしょう、こんなに冷たくなって…」
遊星は自分の熱を分け与えるように手を包む、その様子をじっと見つめながら自分の指先がじわじわと温かくなるのを感じた。
「(温かい)」
与えられた熱が心地いいなと感じ、遊星に笑顔を向ける。
「ありがとな、遊星。温まった」
「いえ、良かったです」
遊星は顔をほころばせると、包んでいた手を離す。その手をすかさず掴むと、驚いている遊星ににっと笑って指を絡めるように握った。
「寒いし、今日はこのまま繋いでいようぜ」
「…はい」
遊星は一瞬目を見開いたがすぐに笑みを浮かべ頷くと、手を握り返してくれた。
繋いだ手は温かく、先ほどまで感じていた寒さは感じない。
もう一度遊星の手を握り、その温かさにそっと目を閉じた。
END
title:寡黙