手を握られてそのまま引き寄せられて抱き締められたことに黒子はとても驚いた、そしてひどく狼狽した。
所謂、恋人同士なのだからこんな接触があってもおかしくはないのだが黒子が望んでも照れがあるのかなかなか緑間が素直に受け入れてくれなかった。緑間のチームメイトである高尾曰く『ツンデレ』な性格なのだと分かっているから拒否されている訳ではないと、黒子は思っている。
今まで恋人らしい接触はなかったけれど、性格だからと納得できていた。
だから、今の状況に頭が混乱している。
嫌ではない。むしろ、嬉しいと黒子は思っている。
けれどいきなりこんな風に抱き締められることなんて心の準備が、とぐるぐる回る黒子の思考はなかなか冷静になれない。

「み、緑間君?」

どうかしたんですか、と問いかけると抱き締められた腕が少し緩められた。お互いの間に空いた隙間が少し寂しい、と黒子はぼんやりと思った。
視線がかち合ってドキドキと心臓が騒ぎ出した。けれど、それは仕方がないと黒子は思う。お互い好き合っているのだからドキドキしても仕方がない、むしろドキドキしない方がおかしい、と黒子は自分に言い聞かせて少しだけ落ち着いた。

「……恋人を抱き締めるのは普通のことなのだよ」
「っ!」

まさか緑間がそんなことを言うなんて思ってなかった黒子は息を飲むほど、驚いた。そして以前、高尾に言われたことを思い出した。『ツンデレ』にはデレ期があって、普段とは違ってデレデレすることがあるとかなんとか他にも好感度がどうとかフラグがどうとか言っていた気はするが良く分からなかったから聞き流していたが、これがそのデレ期というものなのかと黒子は思った。

「緑間君がデレた」
「?何を言っているのだよ」

問うてくる緑間に、何でもありませんと黒子は返した。
滅多にないだろう、と思ったらつい出てしまった言葉だったが説明したらきっと緑間の機嫌が悪くなってしまうと、思い黒子は何も言わなかった。
緑間もそれ以上、追求せず黒子を抱き締め続けた。


END
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -