時計の針が間もなく0時を指そうとしている。黒子は時間を気にしながら、目の前にいる青峰をちらりと見た。
青峰は黒子と目が合うと、手を伸ばし自分へと引き寄せ、唇を奪われた。
「んっ…!」
黒子は離れようとするが、力で青峰に敵うはずもなく、舌先が好き勝手に口腔に入り込んできた。
これ以上青峰に好きにさせる訳にはいかない、時間も迫っている。黒子は怪我にならない程度に青峰の舌を噛んだ。
「…ってぇ」
青峰が口元を押さえながら離れると、黒子は非難がましい視線を送るが青峰もムッと眉を寄せ見つめ返した。
「んだよ…テツ、嫌だったのか」
「はい、嫌でした」
きっぱりと言い切った黒子に青峰は僅かに傷付く。
確かに少し強引だったかとは思うが、恋人同士なのだから多少強引にでてもそれは青峰なりの愛情表現でテツなら分かってくれると勝手に思っていた。だか、本人がきっぱりと嫌だと言っているのだから、ここは青峰が反省すべきなのだろう、青峰自身納得はしないが。
そんな青峰の心情を知らず、黒子はちらりと時計を見やる。あと十数秒で0時になる。
「青峰君」
どこか拗ねたようにそっぽを向いていた青峰は名前を呼ばれて、黒子を見やる。
黒子は微かな笑みを浮かべて、口を開いた。
「誕生日おめでとうございます」
カチリと時計の針が0時を指したと同時に黒子はそう言うと、そっと触れるだけのキスを青峰にした。
すぐに離れてしまった黒子を青峰は呆然と見つめ、自分の頬が熱くなっていくのを感じた。
「…ありがとよ」
黒子から視線を外し、赤く染まった頬を書きながらぶっきらぼうに礼を言うと黒子は小さく笑う。
「31日になったら言おうと思ってたのに、青峰君がキスするからちょっと焦りました」
「ああ、それで…」
黒子が嫌だと言っていた理由が分かって、安堵したと同時に嬉しく思う。
青峰は笑みを浮かべて、黒子を再び引き寄せるとぎゅっと抱き締めた。
「テツ、ありがとな…好きだ」
青峰は最後は耳元で囁くように言うと、真っ赤になった黒子の頬に唇を落とした。
Happy birthday!
END
title:瑠璃