火神の指が黒子の顎にかかった。黒子はえ、と小さな声をあげ間近に迫る火神を見やる。
唇に吐息を感じ、黒子は慌てて指で抑えた。すると指の下で火神が不服そうな声をあげる。
「何すんだよ、黒子」
むっとする火神に黒子は眉を寄せ睨む様に見上げた。
黒子としてはいきなりキスされそうになった身としては何すんだ、はこちらの科白だ。
しばらく、睨み合って火神が僅かに身を引いた。
「良いだろ、キスくらい」
「良くありません」
小さく息を吐いて火神が言えば、黒子は間髪入れず言うとそして深い溜め息を吐いた。
「いきなり何なんですか…」
黒子は別に火神とキスするのは嫌ではない。恋人同士であるし、言ってくれれば大丈夫なのだが、こんな風に突然されるのは黒子としては非常に心臓に悪い。
「今日、俺の誕生日だから。お前プレゼントなんて用意してないだろ?だから、キス貰おうと思ったんだよ」
火神はそう言ってじっと黒子を見つめる。
黒子はというと、今日が火神の誕生日だったことに驚き、更に火神の言った様にプレゼントなど用意していなかった。
言葉を詰まらせる黒子の顎を再びとらえた。
「いいだろ?」
低く問う火神な声に黒子はどきり、と胸が高鳴るのを感じながらそっと目を閉じた。
ゆっくりと火神が近付いて、唇を合わせた。
「…誕生日、おめでとうございます。火神君」
黒子の言葉に火神は笑みを浮かべてもう一度キスをした。
Happy birthday!
END
title:夜にまたがるニルバーナ