ぐだぐだと悩むのは性に合わない、と言った火神にそうですね、と黒子は答えた。

「火神君があれこれと悩んでいる姿が想像できませんし」

そう言って黒子は手にしたバニラシェイクのストローに口を付ける。口の中に広がった甘く冷たい感触に満たされ、火神がじっと見つめてきていることに黒子は気付かなかった。

「そうだよな」

ひとつ頷いた火神はぐっと黒子との距離を詰めた。

「火神君?」

どうかしたんですか、と続くはずの言葉は音にならなかった。ふと、唇に触れたのは柔らかな感触を理解するのに黒子は少し時間が掛かった。

「っ?!」
「甘ぇ」

ぺろり、と火神が唇を舐めるを呆然と黒子は見ていた。

「……何するんですかっ」

慌てて黒子は唇を腕で隠す。顔が熱くて湯気でも出ているんじゃないか、とありもしないこと考えて黒子は頭を振る。むしろ、気にするのはそんなことではなくついさっき自分の身に起こったことだ。
唇に残る感触と温度を思い出して、かっとまた顔が熱くなった。

「何って、キスだけど?」
「そういうことではありません」

きっぱりと黒子は火神に言った。

「意味がわかりません」

さっきまで他愛もない話をしていたはずで、それでなぜキスすることになるのかと黒子は混乱する頭で考えてみたがやはり訳が分からなかった。

「さっき、悩んでるのは性に合わねーって言っただろ」
「はい」

それがどんな関係があるのだろうか、と黒子は首を傾げる。まだ頭が混乱しているせいか火神が何を言いたいのか分からない。

「ずっとモヤモヤしてたんだけどよ、してみて分かった」

真っ直ぐに射抜くように黒子を見つめる火神の目は真剣だった。

「お前のことが好きだ」

心臓が大きく跳ね上がったのが分かって、黒子は益々顔が熱くなった。何よりも火神に好きと言われて嫌ではないこと、むしろ嬉しいと思っていることに気付いてまともに顔が見れなくなる。
けれど自分の想いも伝えよう、意を決して黒子は口を開いた。



END

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