※学パロ
放課後を告げるチャイムが鳴ると同時に、前の席に座るヨハンが振り返り明るい笑みを浮かべる。
「十代、一緒に帰ろうぜ!」
「いい…」
ぜ、と続けようとしたが、勢いよく開かれた教室の戸の音に驚き、そちらへ目を向けると肩で息をした遊星が険しい表情でこちらを見つめていた。
そしてあっという間に目の前まで来ると、柔らかな笑みを浮かべた。
「十代さん、お疲れ様です」
「う、ん…おつかれ、」
遊星の表情の変化に驚きつつも小さく笑みを返すと、遊星はどこか嬉しげに目を細めた。
「今日、一緒に帰りませんか?」
そう遊星が言った瞬間、ヨハンが遊星の肩を掴んだ。
遊星は僅かに顔を歪め、ヨハンを見つめ、ヨハンは引きずるように遊星を連れ教室の隅へと連れていった。
「十代は俺と一緒に帰るんだ、遊星は遠慮してくれないか?」
「嫌ですよ、ヨハンさんこそ普段一緒に授業受けたりしてるんですから、こういう時は後輩に譲って下さい」
二人はひそひそと小声で話していてどんな会話をしているかは分からないが、何やら熱心に話している。
「最初に誘ったのは俺なんだから、後輩なんだから譲れよ!」
「絶っ対!嫌です!」
見つめ合いながら熱心に話し合う二人を半ば呆然と見やり、ぽつりとこぼす。
「二人とも仲良いな…」
男同士の友情というやつだろうか、一応女子である自分とはやはり何か隔たりがある。羨ましいな、と思いながら二人を見つめていると、ヨハンと遊星が同時にこちらを振り返った。
「ここは十代に決めてもらおうぜ!」
「そうですね!」
ヨハンと遊星がお互い目配せをしたかと思ったら、素早い動きで目の前までやってくる。
「十代!」
「十代さん!」
すぐ目の前に真剣な顔をしたヨハンと遊星。
あまりの気迫に思わず半歩下がってしまう。
「何…?」
二人にじっと見つめられどぎまぎしてしまう。訳の分からない妙な胸騒ぎのようなものに、内心狼狽えながら二人に問うような視線を送るとヨハンと遊星は同時に口を開いた。
「十代、俺と一緒に帰るよな?!」
「十代さん、俺と一緒に帰りましょう!」
二人の言葉に目を瞬かせ、呆然とする。あんなに真剣だったから、何を言われるのかドキドキしていたのに。
さっきまで緊張していた自分がちょっと馬鹿らしくなって小さく溜め息を吐いた。
するとヨハンと遊星は慌てたように名前を呼ぶ。多分、二人は自分が怒ったと勘違いしたのだろう。真剣な表情は消え、心配そうにこちらを見つめていた。
その様子がおかしくて、小さく笑うと二人の手を取った。
「三人で一緒に帰ろうぜ!」
そう言ってにっと笑みを浮かべると、二人は呆気にとられたような表情をして顔を見合せると、微苦笑を浮かべた。
「そう、だな」
「三人で帰りましょうか」
「おう!」
ヨハンと遊星が手を握り返してくれ、嬉しくなり笑みを深めた。
今日の放課後は楽しくなりそうだ。
END
32423hitキリリク、雪ん子様に捧げます。
ヨハ→十♀←遊星ということで、学パロで書かせて頂きました。少しでも楽しんで頂ければ幸いです(^-^)
素敵なリクエストありがとうございました!
title:六日の菖蒲