ふいに伸びてきた長い指に髪を掬われ黒子は僅かに体を強張らせた。
くすり、と小さく笑う声が鼓膜を震わす。
「赤司、君？」
「何だ？」
黒子がおそるおそる名前を呼ぶと赤司は小さく首を傾げながら目を細めて黒子を見つめる。
赤司の指は相変わらず髪を梳いていて、黒子は嬉しいような苦しいような気持ちになってどうして良いか分からなくなる。
黒子は何も言えなくなって赤司から目を逸らした。
「テツヤ」
赤司の指が髪から頬へと滑り、そっと撫でる。
甘い声で名前を呼ばれて、黒子はますます嬉しいような苦しいような感覚が胸に広がっていく。
「っ…赤司君？」
「僕を見て」
黒子は反射的に赤司の顔を見つめると赤司は満足そうに微笑んだ。
「テツヤ、好きだよ」
「…っ！」
囁くように告げられた言葉に黒子は身体がかっと熱くなる。恥ずかしくてどうにかこの場から逃げ出したくなるが、赤司の指が頬を撫でていて、その手付があまりに優しく動けなくなる。
「テツヤは？」
赤司はゆると首を傾げて問いかけると黒子はえ、と小さく声をあげる。
「僕のこと、好き？」
赤司はにこりと笑みを浮かべて黒子を見つめる。
「はい…好きです」
するっと出た言葉に黒子自身驚く、ただ赤司の告白は嫌ではなくむしろ嬉しかった。
「（ああ、ボクは赤司君のこと好きなんだ…）」
分かってしまえば、さっきまでの嬉しいような苦しいような感覚は赤司に恋をしていたのだ。
頬を撫でていた指が顎をとらえる。
「嬉しいよ、テツヤ」
そう言って赤司は顔を近付け、そっと唇を合わせた。
黒子は唇に触れる温かな感触に満たされる思いが胸に広がる。もう少しこのままで、と思い黒子はゆっくり目を瞑った。
END
title：瑠璃