「黒子っち!」

黄瀬に呼ばれて黒子の心臓は大きく跳ねた。たが黒子は表情にはまったく出さずいつもの無表情で淡々と何ですか、と問いかけた。

「一緒に帰ろ」

黄瀬は黒子の表情を気にした様子なく、明るい笑顔を浮かべる。黒子はまた心臓がどきりと高鳴るのを感じた。

「…良いですよ」

黒子の了承を得て黄瀬は嬉しそうに笑みを深めると隣へ並んで歩いていく。黒子はなるべく黄瀬を見ないようにしながら先ほどから忙しなく鳴る心臓を落ち着かせようとひっそり深呼吸する
黄瀬に名前を呼ばれる度に、笑顔を向けられる度に苦しくなるくらい胸が高鳴るのだ。

「(苦しい、けど…)」

黒子はこの感覚を嫌ではないと思っている。

「黒子っち、どうかしたんスか?」

心配そうに顔を覗き込む黄瀬に黒子はまたどきりとする。息がかかるくらい近い距離に顔が赤くなりそうだが黒子は何とか平静を保ち、黄瀬を見返す。

「何でもないです…それより黄瀬君、マジバに寄りませんか?」
「お、良いスね!」

黒子の提案に黄瀬は楽しげに笑って頷いた。
軽い足取りで歩いていく黄瀬を見つめながら黒子はそっと自分の左胸に手をやる。

「(これは…何て言うんだろうか)」

いまだにどきどきと早く鳴る胸を軽く撫で黒子は小さく首を傾げた。



END

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