ふいに火神の顔が近づいてきたと黒子は察し、思い切り叩いた。
「ぶっ…何すんだよ」
「それはこちらの科白です」
火神と距離を取りながら後ろへ下がり黒子は睨むように見つめる。その頬は僅かに朱に染まっている。
「何しようとしたんですか?火神君」
「は?キスだけど」
さらりと答える火神に黒子は小さく息を吐いた。
帰国子女ゆえにか火神は人目をはばからずスキンシップをとってくることがある、黒子はそれが非常に恥ずかしくてならない。
「(人前でキスなんて…っ)」
いつだったか部員の前でキスされたことがあり、黒子は本当に消えたくなった。
「黒子」
低く名前を呼ばれ黒子はぞくりとしたものを感じ、一歩後退る。
「こ…ここでは駄目です」
黒子はゆっくりと伸びてきた火神の手を掴んでゆると首を振る。
火神は一度瞬いて黒子をじっと見つめた。
「なら、ここじゃなけりゃ良いんだな?」
黒子が小さく頷くと火神は満足そうに笑みを浮かべて黒子の頭をわしわしとかき混ぜるように撫でた。
「じゃあ、後でな」
火神は黒子の耳元で囁くように言うと足取り軽く歩いていく。
黒子は熱くなった顔を手で覆って小さく息を吐いた。
END
title:瑠璃