少し緊張しなから隣を見れば、遊戯さんは広場を見下ろしていた。
いまだに広場では大会の熱が冷めず、デュエルをする者、あるいはデュエルモンスターズのモンスターに扮した人々と写真を撮る者がいた。
どうしよう。
一度遊戯さんから視線を外し考える。遊戯さんに伝えたい事があるのだが、それを言ってはこの時代の未来が変わってしまうかもしれない。
もう一度、遊戯さんを見ると今度は視線が合わさった。

「っ!」
「どうしたんだ?十代」

遊戯さんが不思議そうにこちらを見つめ、ゆると首を傾げた。

「な、なんでも…!」

なんでもないです、と言おうとしたがそれでは後悔するのではと思い、言葉を呑み込む。
ずっと伝えたかった、この機会を逃したらもうチャンスはないのかもしれない。

「遊戯さん、」

緊張しながら、それでも遊戯さんの目をしっかりと見つめる。

「ありがとうございました」

遊戯さんは一度目を瞬かせ、小さく苦笑を浮かべた。

「俺に礼を言うのは違う気がするが…」
「あ、今回のことじゃなくて!」

遊戯さんの言葉に慌てて手を振ると、ますます首を傾げられてしまう。
一度深呼吸して、口を開く。

「俺を最初に導いてくれたのも、最後に導いてくれたのも遊戯さんでした、お礼をずっと言いたかったんです、ありがとうございました!」

今の遊戯さんにこんな事を言っても意味不明で訳が分からないだろう、変な奴だと呆れられるかもしれない。
今度は先程と違う緊張感に包まれる、憧れの遊戯さんにそんな風に思われるのはやはり辛い。
遊戯さんはじっとこちらを見つめると、小さく笑みを浮かべた。

「そうか」

柔らかな遊戯さんの笑顔に全身の力が抜けるような気がした。
遊戯さんの笑みには呆れなどはなく、自分の言葉を受け入れてくれたのが嬉しかった。

「あの、遊戯さん」

もう一つ、伝えたい事が出来、遊戯さんを呼ぶ。

「また会いましょう!」
「ああ」

笑顔で頷いてくれる遊戯さんに本当に嬉しくなる。
この時代からそう遠くない未来。

また会いましょう!



END



title:確かに恋だった
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