※猫の日ネタ。



黒子テツヤは無表情ながらも困惑していた。
チームメイトたちが周りを取り囲むように黒子を見つめていたからだ。

「黒子、良いからコレをつけるのだよ」

緑間が差し出したモノを見て黒子は青ざめた。
白いふわふわとした三角の耳、猫の耳を模したカチューシャだ。

「今朝のおは朝で水瓶座のラッキーアイテムは猫耳カチューシャだったのだよ」

だからコレを付けるべきだと、緑間は言うのだ。黒子は占いを信じてはいない、ラッキーアイテムだと言われてもそれを身に付けるのは抵抗がある。ましてふわふわの猫耳カチューシャを中学生男子が身に付けているなんて考えられない。
黒子は一歩後退るがすぐ後ろは壁で逃げ場がない。嫌な汗が背を伝うのを感じながら、どうにか突破口を見出だそうと相棒である青峰を見つめた。

「テツ、ぜってぇ似合うから付けてみろよ」

にっと笑って言う相棒に黒子は絶望する。囲まれている時点で気付くべきだったのだ、ここに味方がいないと。

「黒子っち、付けてくださいっス!絶っ対!可愛いスから」

爽やかなモデルスマイルを浮かべて黄瀬が言う。女子ならすぐに頷くだろうが生憎と黒子は男子だ、可愛いと言われてもまったく嬉しくない。

「黒ちん、猫耳付けないのー?」

期待に満ちた目で紫原はふにゃふにゃとした笑みを浮かべて黒子を見つめる。
一瞬黒子はぐらりと揺れた、無邪気な紫原の笑顔には何となく弱いのだ。だがだからといって猫耳カチューシャを付けるのは嫌だ。
黒子はどうすればと俯いて思案していると不意に影が落ちる。はっと顔を上げるとにこりと笑みを浮かべる赤司が目の前にいた。

「黒子」

名前を呼ばれてびくりと肩が揺れる。

「付けるんだ」

赤司に有無を言わせない迫力のある笑顔で言われて黒子は頷くしかなかった。



黒子は遠い目をしながら考え事をしていた。

「(確かあの本の新刊が出てる頃はず、帰りに本屋へ寄ろうか…)」

ピローンやカシャッと近くで音がするが黒子は気にしない、否気にしないようにしている。

「黒子っち可愛いっス!」
「可愛いねー
「うむ…良いな…」
「待ち受けにしよ」

チームメイトたちが色々と言っているがそれも聞こえない、聞きたくない。
黒子は深い深い溜め息を吐く。

「(ボクはどちらかと言えば犬派なんですが)」

黒子は割とどうでも良いことを考えて再び溜め息を吐いた。



END

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