緑間は隣を歩く黒子を気付かれないように見下ろした。
正確には歩くのに合わせてゆらゆら揺れる手を見つめていた。
緑間と黒子は恋人同士であるが、緑間の素直になれない性格が災いしてか触れ合いというものがなかなかない。今日も本当は手を繋ぎたいと考えているが、それを実行出来ないでいる。
そんな自分に緑間は苛々するが、どうしても自分から手を繋ぎたいとは言えない。

「(まったく、難儀な性格だ)」
「緑間君」

緑間が眼鏡のブリッジを上げ、小さく溜め息を吐くと黒子が名前を呼ぶ。

「さっきから様子が変ですけどどうかしましたか?」
「どうもしないのだよ」

ゆると首を傾げる黒子から緑間は顔を逸らすと歩調を速めた。
ふと黒子が隣にいないのに気付き振り返るといつもの無表情で緑間を見つめていた。

「黒子…?」
「今日は寒いですね」

突然の黒子の言葉に緑間は訳が分からず僅かに首を傾げる。そんな緑間に構わず黒子は続ける。

「手が冷たくなってしまったので、手を繋ぎませんか?」

そう言って手を差し出す黒子は微かに笑みを浮かべている。
緑間は差し出された手と笑みを浮かべる黒子を交互に見て一瞬戸惑ったが再び眼鏡のブリッジを押し上げひとつ溜め息を吐く。

「…お前がどうしてもと言うなら繋いでやってもいいのだよ」

黒子から視線を僅かに外しながら緑間が言えばくすり、と笑った。

「どうしても、お願いします」
「仕方ないな」

渋々といった体を装い緑間は黒子と手を繋ぐ。
繋いだ手は温かく、緑間の胸の奥もほんのり温かくなった。



END

title:瑠璃
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