先程から背中がむず痒い。僅かに視線を後ろへ向けると十代さんがじっとこちらを見つめていた。
用があれば声をかけるだろうし、ぼんやりしているにしてははっきりとした目で、やはりこちらを見ているのだと思う。
どうしたものかと思い、作業の手を止め十代さんに向き直った。

「十代さん」
「ん、何だ?」

名前を呼ぶと十代さんは首を傾げる、相変わらず視線はこちらに向けたままだ。

「あの、そんなに見つめられると…その、」

はっきりと言えば照れる、がそう言う事が出来ない。こういうところが他人から言わせればへたれ、なのだろうがどうしても言う事が出来ない。どうすれば良いか考えていると十代さんが口を開く。

「遊星」

呼ばれてはっと思考を中断すると、十代さんが手招きをしていた。首を僅かに傾げて傍に寄ると、いきなり胸ぐらを掴まれ思い切り引き寄せられた。

「…っ!」

何が起きたのか一瞬分からなかった、気付けば目の前に十代さんがいて自分が覆いかぶさる様に十代さんの上にいた。
驚きのあまり硬直していると、十代さんの手が伸びてきて頬に触れる。

「遊星はさあ…俺の事好き?」

輪郭をなぞる様に頬を撫でる十代さんにどきり、とする。

「っ…好き、です」

そう言うと十代さんは満足そうに笑みを浮かべた、頬撫でていた手が今度は唇を撫でる。

「じゃあさ、遊星からキスしてくれよ」
「えっ…」

十代さんの言葉に驚き目を見開いていると琥珀色の目がじっとこちらを見つめている。

「どうなんだ?」

うっとりと微笑む十代さんにどこか色香を感じ、ああ、やはりこの人は年上なんだなと変な感心をしてしまう。
そろりと十代さんの頬に触れ撫でると擽ったそうに身を捩らせた。

「十代さん」

名前を呼ぶと十代さんは小さく笑みを浮かべて目を閉じる。
自分も目を閉じるとそっと唇を合わせた。
ゆっくり離れて、目を開けると十代さんは嬉しそうに笑みを浮かべていた。

「…っ、十代さん、何でいきなり…キ、キスを…?」

恥ずかしくなって目を逸らし問いかけると、十代さんはきっぱりと言った。

「遊星からのキスが欲しいだけ」
「……っ」

そんな恥ずかしい事をさらりと言わないで欲しい、こっちは照れて何も言えなくなってしまうのに。

「(ああ、まったくこの人には)」

敵わないな、と思い、十代さんをぎゅうと抱き締めて、再び口付けた。



END



おあげ様に捧げます!お誕生日おめでとうございます!ラブ甘な遊十、との事でしたが…ラブ甘になってるでしょうか?;少しでも楽しんで頂ければ幸いです(^-^)

title:確かに恋だった
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