最近、自分はおかしい。
友人である十代を見かけると胸が高鳴り、名前を呼ばれると胸の奥から温かなものが溢れる。
嫌な感じではないし、むしろ嬉しいような浮かれた気分になる。これは何なのかと首を傾げてしまう。
経験したことのない感情に戸惑って、そのせいで十代の顔をまともに見れなくなってしまっている。
「(おかしい、よな…コレ)」
ドキドキと忙しなく鳴る心音が隣にいる十代に聞こえてしまうんじゃないかと心配になる。十代に変に思われたら嫌だ。
嫌われたらきっと立ち直れない。
「(おかしいよな…友達をこんな風に思うなんて、)」
これじゃあまるで恋でもしているかのようだ。
そう思い至って、はっとした。しているかのようではなく、自分は恋をしているのだ。友人である十代に。
意識した瞬間、顔が熱くなっていく。何だ、答えはすぐ傍にあったんだ。あんなに悩んでいたのが馬鹿らしく思えて軽く笑ってしまう。
「はは、俺って鈍感だったんだな」
未だに熱を持つ顔を片手で押さえ、ひとつ息を吐くと後ろから名前を呼ばれる。
どきりと胸が高鳴った。
振り返れば十代が笑顔でこちらに駆け寄ってきた。
「ヨハン、探したぜ!」
十代がどこか嬉しそうに見えるのは、欲目からだろうか。
じっと琥珀色の瞳を見つめると十代は僅かに首を傾げ、もう一度名前を呼ぶ。
「ヨハン?」
「十代、お前に言いたいことがあるんだ…聞いてくれるか?」
頷く十代に、笑みを浮かべてこの想いを告げた。
END
title:M.I