さっきから十代さんの様子がおかしい。
じっとこちらを見てたかと思えば、俺が視線を向けるとついと逸らされてしまう。何かしただろうかと考えるがまったく身に覚えがない。

「十代さん」

名前を呼ぶとやっと視線が合わさった。そのことに安心し僅かに首を傾げて問いかける。

「何かありましたか?さっきから様子が変ですが…」

すると再びついと視線が逸らされた。

「別に、普通だろ?」

そうは言うが明らかに普通ではないと思う。
やはり自分が知らぬうちに十代さんに対して何かしでかしてしまったのではと焦ってしまう。取り敢えず自分が今までしていた行動を振り返ってみる。
特に十代さんに何かした覚えはなく、いつも通りに過ごしていたはず。

「(分からない…)」

そうこうしているうちに十代さんの表情が険しくなっていく。やはり怒っているようだ。

「十代さん、やはり何かあったんですね…俺何をしたんでしょうか?」

恐る恐る聞いてみると十代さんは目を眇めこちらを見やると僅かに唇を尖らせる。

「…遊星、全然俺を構ってくれねえじゃん」

そう言ってまた視線を逸らされた。
ぽかんとして十代さんを見つめながら、内心納得した。そう言えば今日は挨拶や他愛もない話はしたが恋人らしい触れ合いなどは一切なかった。

「(それで、拗ねて…)」

今までの十代さんの言動の理由が理解出来た、だがどうやってすっかり拗ねてしまった恋人の機嫌を直すか考えなければならない。

「遊星」

不意に名前を呼ばれ十代さんを見れば手招きしている。招かれるまま近くと腕をとられ勢いよく引き寄せられた。

「っ?!」

そのままバランスが崩れ十代さんを押し倒す格好になる。

「じ、十代さん?」
「考えるより行動、な」

にっこりと微笑みその顔は艶めいていてとてもさっきまで拗ねていた人物とは思えない。

「(ああ、でも…)」

そんなところも好きだなと思い、そっと唇を寄せた。



END



25452hitキリリク、匿名様に捧げます。
リクエストありがとうございました!
子どもっぽいことをするようで一枚上手な十代に翻弄される遊星のお話、とのことで素敵なリクエストありがとうございます(^-^)楽しく書かせて頂きました!少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
またサイトへ遊びに来てやって下さいませ。

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