あれ、と思って目を開けると見慣れた天井があった。身体を起こし、ぼんやりとした頭でどうしていたのか思い出す。

「ああ、俺寝ちまったのか…」

頭を掻きながら欠伸を一つすると体が痛んだ、床なんかで眠るものじゃない。
一度体を伸ばし時計を確認すると夜の九時を過ぎていた。
首を傾げて辺りを見回してみる。

「ヨハンに遊星…まだ来てないのか?」

今日は放課後三人でデュエルをしようと言っていたのだが、レッド寮へ向かう途中で二人は用事を思い出したらしく先に帰っててくれと言われ帰ってきたは良いがいつの間にか眠ってしまったようだ。
もし、二人が来ていたら起こしてくれただろうし、例え自分が起きなかったとしてもベッドに運んでくれたり、毛布をかけてくれたり何らかをしてくれると思う。

「(二人とも親切だもんな)」

いい友人を持ったなあ、と一人浸っているとドアをノックする音とよく知った声が聞こえた。

「アニキ、起きてるっすか?」
「ああ、起きてるぜ、入れよ」

促せばドアが開き、翔が入ってきたかと思うと部屋を見回して首を傾けた。

「あれ?アニキ、今日はあの二人とデュエルするって言ってなかったっすか?」

翔の言葉に苦笑を浮かべて肩を竦める。

「それが何か用事があるらしくてさ、まだ来てないんだ」
「へえ、そうなんすか…意外…」

どこか驚いた様に言う翔に再び小さく苦笑を浮かべる。
確かにあの二人がここまで自分との約束に遅れるのは珍しい、遅くなるなら連絡の一つでもよこして良さそうなのに、携帯にはまったく連絡がない。
用事が忙しいのかもしれない、今日はもうデュエルは出来ないかもな、と半ば諦め小さく息を吐く。

「十代、いる?」
「ああ、いるぜ」

ノックとともに声をかけられ、返事をすれば明日香が部屋に入ってきた。

「明日香、どうしたんだ?」
「ええ、ちょっと…」

僅かに視線を逸らし、言葉を濁す明日香に翔と顔を見合わせる。結構はっきりとものを言う明日香が、こうも言いづらいそうにしているのが珍しい。

「…十代、今日ヨハンと遊星とデュエルする約束、してたわよね?」
「ああ、そうだけど…?」

それがどうしたのだろうか、首を傾げていると明日香が一つ息を吐いた。

「ここに来る途中、二人がデュエルしてたわよ」

明日香の言葉を聞いた瞬間、時間が止まった様な気がした。

「………へ、」

あまりのショックにやっと出たのは間抜けな声だった。
三人でデュエルをしようと約束したのに。
用事と言ってたのに、それは嘘で二人だけでデュエルをしてるなんて。

「ア、アニキ?」

翔が心配そうに声をかける。
腹の底から怒りが込み上げ、ぶるぶると体を震わせ、血が出るんじゃないかと思う程強く拳を握った。

「っヨハンも遊星も、嫌いだー!」

部屋中に自分の叫び声が響き、翔と明日香が顔を見合せ苦笑を浮かべていた。




一方その頃。

「っ…また引き分けか」
「そうみたいだな…」

ヨハンと遊星はあれから何度もデュエルをしているが決着はつかず、引き分けが続いていた。
お互いに睨み合い、再びデュエルディスクを構えた。

「もう一度勝負だ!」
「望むところだ!」

熱くなり過ぎ、結局その日十代との約束をすっぽかしてしまった二人は三日間十代に無視される事になったのだった。



END

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