ただもう一度十代さんに会いたい。
そう願ったのは事実だが、目の前の状況に困惑してしまう。

「どうしたんだ?大丈夫か?」
「あ、はい…」

顔色の悪い自分に対し心配そうに声をかけてきたのは十代さんだ。ただ自分の知っている十代さんとは微妙に違和感がある。

「そっか、なら良かった」

安心したように人懐っこい笑顔を向けてくる。それは自分の知ってるものより無邪気でただただ好意的な感情だけを向けてくる。

「あの、それでここはどこなんですか?」

先程も同じ質問をしたがどうにも信じられず再び問うと十代さんは一瞬きょとんと目を瞬かせ、やはり同じ答えを返してくる。

「ここはデュエルアカデミアだぜ」
「お名前は?」
「遊城十代!オシリス・レッドの一年生だ、ってさっきも同じこと聞いたよな?」

 そう言って首を僅かに傾げる十代さんに思わず肩が落ちる。やはり間違いなく遊城十代さんだ、ただ自分の知る十代さんより若いのだ。
 少し短い髪、頬の辺りにまだ幼さをうっすらと残している。どうしてかは不明だが、自分が望んだ時代よりも少し前に来てしまったようだ。
深い溜め息を吐くと十代さんはまた心配そうにこちらを見つめる。それに大丈夫です、と答え小さく笑みを浮かべた。

「(それにしても、)」

不思議な感じだ。この十代さんがこれから数年後に自分の知る十代さんになるというのが。

「?どうしたんだ、じっと見て?」
「いえ、何でもありません」
「そっか?なら良いけどさ」

にっと笑う十代さん、その笑顔に心臓が大きく跳ねる。この笑顔は見たことがない、そしてこれから見れなくなってしまうのだ。
そう思うと胸が締め付けられるように苦しくなる。

「っ十代さん、」

自分よりも僅かに小さい手を掴む。驚いて目を見開く十代さんに構わず何とかこの胸の内にある思いを言葉にしたくて口を開くが、うまく言葉に出来ない。

「…っ!」

突然視界が滲んで後ろから引っ張られるような感覚がした。恐らく元の時代へ戻ろうとしているのだろう。
このまま何も言えないまま別れてしまうのは嫌だ。

「十代さん!また、俺と……っ!」

掴んでいた手が離れ、眩しい光に包まれ思わず目を瞑る。
次に目をあけたときはよく知った景色が広がっていて自分の時代に帰ってきたのだと嘆息した。

「…届きましたか?」

空を見上げてぽつりと呟く。

『また、俺と会いましょう』

きっと届いたと信じ、そっと目を閉じた。



END

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