「アオイ…」

名前を呼ぶだけで胸が締め付けられるように苦しいが嫌な感じはしない。これが恋というものなのだろうか。
自分の右手をじっと見つめる。彼女に触れることは叶わなかったけれど、影は確かに触れ合っていて月明かりに映し出されたそれは仲睦まじく並んでいた。

『こうすれば、ほら、僕らも手を繋げるよ』
『うん……そうだよね』

微笑みを浮かべてそう言うとアオイは小さく頷いた。その顔はひどく嬉しそうだったけど、何だか泣き出してしまいそうで本当に触れることが出来たなら抱き締めたかった。
ぎゅっと右手を握り締め瞑目する。
きっと自分のしたことをアオイが知れば嫌われるだろう。それでも気持ちを伝えずにはいられなかった。

「アオイ…」

目蓋の裏には彼女の明るい笑顔が映る。呼んでもこたえてくれる人はいないけれどそれでも暖かく優しい気持ちになれた。



END

title:ごめんねママ
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -