あまりに馴れ馴れしいからつい見てしまったが、どう思われたのか翡翠色の目がこちらを睨んだ。
確かに、彼らは親友で端から見ても仲が良いのは分かるがそんなに馴れ馴れしくする事はないんじゃないかと思う。

「それでさー…って、ヨハン話し聞いてるか?」
「聞いてるって」

僅かに苦笑を浮かべて答えるのはヨハン・アンデルセン。こちらを見ていた時とは比べものにならないくらい穏やかな表情だ、まあ例えこちらに同じ表情されても気持ち悪いだけたのだが。
ヨハンに向かって身振り手振りしながら実に楽しそうに話す十代さんは、本当に可愛らしいと思う。ただ出来ればこちらも見て欲しいと、少し思ってしまう。

「もうあれは凄かったぜ!な、遊星」
「はい、そうですね」

思いが通じたのかぱっと明るい笑顔がこちらを見た。胸に温かなものがじわりと広がって、自然と頬が緩む。
十代さんが楽しそうに話しをしてくれるだけで、幸せな気持ちになる。
自分は本当にこの人の事が好きなのだ、だがそれはヨハンにも言える。ヨハンも十代さんが好きなのだ。こちらを見る目に敵意の様なものを感じる。

「(だが、負けはしない…)」

そう心の中で決意していたら、不意にヨハンの腕が伸びてきて十代さんの肩を抱いた。
驚いたが表情には出さない、十代さんには勿論だがヨハンにそんな顔を見せるのは嫌だった。
十代さんは笑ってヨハンと肩を組む。
思わずヨハンを睨めば、ふと小さく笑われた。ぶちり、と自分の中で何かが切れた音がした。
気付いたら手が出ていた。ヨハンの手を十代さんの肩から払い除けたのだ。

「………」
「………」

十代さんは気付かなかった様で楽しそうに話しを続けている。
良かった、と思うが今はそれどころではない。
十代さんを間に睨み合い。
ゆっくりと口を開き、低く十代さんには聞こえない様に言う。

「…おい、デュエルしろよ」
「望むところだ」

笑顔で答えるヨハンの目は笑ってはいない。
余程腹に据えかねたのだろう、いい気味だと思う。

「十代さん、先にレッド寮に戻っていてもらえますか」
「え?何で…?」

首を傾げてこちらを見つめる琥珀の目に一瞬見惚れてしまう。
ヨハンが小さく笑って、軽く肩を叩いた。

「俺達ちょっと用事を思い出してさ、どうしても今すぐやらなきゃならないんだ」

ヨハンの言葉に十代さんはそうか、と一つ頷いてにっこり笑った。

「じゃあ、俺寮で待ってるから、二人とも早く来いよ!」
「おお!」
「はい」

レッド寮へと向かう十代さんの背を見送ると、ゆっくりとヨハンの方を見やる。

「遊星、決着つける時だな」
「そうだな、だが負けはしない」

デュエルも、十代さんを想う気持ちも決して負けはしない。
デュエルディスクを構えると、二つの声がその場に響いた。

「「デュエル!」」




END



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