ある日突然に、十代さんがいなくなった。
何の言葉も便りもなく、何も残さず最初から何もなかったかのように消えてしまった。あまりに突然で涙すら出ずただただ呆然とした。
十代さんと初めて出会ったのは時空を越えた先で、共に戦うなかで好きになったが時代の違う者同士、叶う想いではないと諦めていた。
だが自分の生きる時代で再び出会うことが出来た。あの時の衝撃と喜びは忘れられない。
その時に想いを告げ、十代さんは少しだけ迷っていたが受け入れてくれた。
嬉しかった、幸せだった。
それが永遠と続くわけではないと知っていたのに、この日々が続いていくだろうと思い込んでいた。
十代さんを愛おしむ精霊と一緒になったことで彼の時間が止まってしまったのに気付いていた。自分と同じ時は過ごせないと気付いていた。いつか自分が十代さんを置いていくのに気付いていた。

「十代さん…」

名前を呼んでも応えてくれる人はもういない。

「…十代、さん」

それでも呼ばずにはいられない。
どうすれば良かったのか、この想いを伝えずにおけばまだ傍にいてくれただろうか。
何も残っていない部屋にただ立ち尽くし、名前を呼び続けた。



END

title:Aコース
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -