さっきまで楽しげに喋っていた声が聞こえなくなり、かわりに規則正しい寝息が聞こえてくる。
視線を向ければ十代さんが座ったまま眠っていた。

「十代、さん?」

そっと声をかけるが反応はなく眠り続けている。僅かに苦笑を浮かべるとその寝顔をまじまじと見つめた。
まだ幼さを残す丸みを帯びた頬、色素の薄い髪と同じ色の睫毛、ふくよかではないが別に薄くはない唇。すべてが素晴らしく美しく思えるのはやはりこの人を好きだからだろうか。

「ん…」

小さな声が聞こえ、温かな重みが肩にかかる。自分の肩にもたれかかりいまだに眠り続ける十代さんの髪をそっと梳くと微かに笑ったような気がして胸の奥が温かくなる。

「(でも、いつまで保つか…)」

自分も男だ、無防備な好きな人がこんなに近くにいて理性を保つのは難しい。
一つ溜め息を吐いて、天を仰いだ。
もし、このまま起きなかったらキスの一つでもしてしまおうと心に決めて。


狼まであと何秒?



END



title:確かに恋だった
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