※敵対する二人 もっと、上手に大事にできたらよかったのに。 愛せないことを嘆く 自分のどこが悪かったのかなんて、思い当たる節は山ほどあった。 いつだって自分はお荷物で、護られてばかりで、弱くて、その癖強がって。 けれどどれを拾ってみたところで、あの人と別の道を歩くことになった理由にはならなかった。 悪かったのは、生まれた時代。 そうでなければこんな、身を裂くほどの苦しみが、あの人を襲うことなどなかったのだろうに。 あの夜は、まだ消えることはない。 二つの息遣いしか聞こえない狭い小屋の中で、傷ついた私を躊躇いがちに、それでもしっかりと彼が抱き締めてくれたこと。 護れなくて悪かったと微かに震える指がそう告げていた。 自分と同じ立場である彼が負い目に感じることへの矛盾を口にして平気だと笑った。 もうどれほど前になるだろう。 互いが互いを大切だと確信したはずだったのに。 自分を愛すことよりも、復讐に身を委ねた彼を、引き留める足枷にはなれなかった。 ただそれだけが、悔しくてならない。 背景には、炎がごうごうと燃え立ち、その中に里人達の悲鳴が聞こえる。 そこにあった幸せも、悲しみも、苦しみも、喜びも、今となってしまえば全てはあの火の海の中だ。 一切の甘さをなぎ払って、サクラはそこにたっていた。 今もなお、冷たい瞳を持ったままのサスケの目に、そのことだけはよくわかった。 靡いたのは淡紅色の髪。 怒るでもなく、笑うでもなく、泣くでもない真っ直ぐな瞳がやけに心苦しいと感じたのは、懐かしい感覚。 炎の熱風が此処まで届く。 それでも真っ赤に染まった故郷を嘆いてる暇はない。 今はただ目の前の、故人を捕えることが私に課せられた使命。 「動じないんだな」 他人事のようにその口は動く。 「そっちこそ」 サクラがひとつ息を吸った。 「顔色ひとつ変えないで、よくもこんな真似が出来たわね」 幼き頃。 サスケを求め、愛し、止まなかったのは。 「それなりの、覚悟はできているんでしょう」 哀しい過去を背負いながらなお、優しさが秘めていたから。 「サクラ」 時折そう、ささやく声も。 今は心が此処にないと分かっていても。 「俺はお前を殺したくはない」 喩えその言葉が、詭弁だとしても。 悲しみの炎の熱に曝され、それでもなお顔色ひとつ変えぬこの人を。 「残念。私はサスケ君を殺さなきゃならないみたい」 まだ愛していると思う自分はなんて愚かで、残酷で。 「ばいばい」 振りかざした刃の光は、頬を塗らした涙の滴か。 知ることなど、許されないのだろうけれど。 END. |