何ヨ。 いや、もう来ねぇかと思った。 来たくなかったアル。お前の部屋に貯蔵してた酢昆布取りに来ただけだヨ。 ああ、そうかい。なら早く済ませてとっとと帰れ。 そうしたいのは山々だけどな、それがそうもいかないアル。 何で。 銀ちゃんが家に入れてくれないのヨ。 なんで。 向き合ってこいって。 そうかい。何と。 お前と。 気持ち悪いな。今更てめーと何を向き合えばいいんでィ。 本当だヨ。銀ちゃんも最近何を考えてるかわからないネ。 そういや、最近旦那に会ってねぇな。 何も変わってないヨ。 眼鏡は。 相変わらず。姉御も定春も皆、元気。 へぇ。 他は。 は。 聞きたいこと。 ああ。そろそろ雪は降りそうか。 何言ってるアルか。この間夏が終わったばかりネ。次は秋だヨ。 なぁ。 秋の次が冬。 わがまま言っちゃいそうなんだけど、いい。 駄目。冬になって雪が積もったら雪合戦で勝負アル。 雪が積もるまで、俺の側にいて。 積もるまででいいアルか。 ごめん、嘘。一生。 嘘吐き。 守ってやるからさ。 お前なんかに守られたくないネ。 てめぇも一つ約束守れ。 嫌。 俺より先に死ぬんじゃねぇぞ。 当たり前ネ。年寄ってる奴から順に死んでくんだから。 違ぇねぇな。 お前今笑ったろ。 だって泣いてんだもんよ、てめぇ。 とことん卑屈な奴だヨ、お前。 なんとでも言えや。 大嫌い。 どう致しまして。
音のみが、散る世界
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