「俺のほうがユーリスを愛してる」

「坊っちゃんにはまだ早い。ユーリスは百戦錬磨の俺に任せるべきだ」


エルザとジャッカルの終わりの見えない争奪戦はすっかり見慣れてしまった。マナミアは微笑むだけ、セイレンは呆れ顔、クォークはため息、一番の被害者であるユーリスは二人の話を極力耳に入れない努力(聞いていて恥ずかしくなる)をしている。


「今日こそ決着をつけよう、ジャッカル」

「その言葉後悔するなよ?」


結局決めるのはユーリスなのだが、いつも勝手に二人は勝負を始める。その内容は特に殺伐としているわけではなく、早食い対決など至って平和なものである。


「罪な子だなぁ、ユーリスちゃんは」

「…ちゃん付けで呼ばないでよ、セイレン」


セイレンは二人の口論には興味ないが、二人のどうでもいい対決になら興味があるらしい。今日はなにするんだろうな、なんて言いながらユーリスの肩に手を置いた。
その隣でクォークが本日何度目かのため息を吐き出す。任務の話が切り出せずに困っているようだ。本当に彼は苦労性だと思う。


「…おい二人とも、今日は任務が」

「ごめんクォーク。俺にはやらなきゃいけない戦いがある」

「そうそう、男として退けない戦いがな」


さすがのクォークもしびれを切らしたのか、呆れるユーリスを抱き寄せてエルザとジャッカルに見せつけるように笑った。


「まずは任務だ。行かなければユーリスは俺が貰う」

「…うん、いいね。クォークになら貰われてもいい」

「な…っ」

「途中参戦の奴にユーリスを渡せるわけないだろ!エルザ、勝負は後だ!」


もちろんクォークとユーリスはとっさに口裏を合わせただけなのだが、二人には効果覿面だったようだ。


「クォークさんが参戦だなんて…ふふ、おもしろくなりそうですわ」

「…いや、マナミア…俺は」

「頑張ってくださいね、クォークさん」


マナミアの笑顔に退けなくなったクォークの苦労は、しばらく続く。




大好き争奪戦!
たぶんクォークも参戦するうちにユーリスのことを本気で好きになっていくんだ!そうに違いない!←


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