200人うぇい企画 | ナノ
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 誕生日の昼休み。プレゼントがあるから屋上に来て、と呼び出され、人目もはばからずスキップで屋上に向かった俺に、彼女は何の前置きもなしに「はい、どうぞ」と。もう少し受け取るまでの時間を楽しませて欲しかった気もするけど、恥ずかしがりやの彼女のことだ、少しぶっきらぼうでも仕方がない。否、それすら可愛い。
 さんきゅ、と素直に受け取って「開けてもいい?」と聞けば、素直にこくりと頷く彼女。口には出さないけれど、心做しか表情がわくわくしているのが見て取れる。これはつまらない反応したら拗ねるやつだ。彼女から貰ったものならなんでも嬉しいのだけれど、それが彼女に伝わるかどうかは俺次第である。
「開けても良い?」
「うん、いいよ」
 彼女の許可を得て、俺は包装をゆっくり開ける。因みに去年はお洒落なパーカーだった。着心地もデザインも俺好みで、一年たった今でも愛用している。どうやら今年は、サイズ的にパーカー類ではなさそうだ。
 袋を開けて、奇抜なデザインの布に首を傾げること数秒。ハンカチ、にしたら奇抜すぎるような。取り出してみなければ、その布が何なのか判別できないと踏んで、今度は袋に手を突っ込む。触ったことのある手触りに、再び首を傾げた。箱の中身は何だろな、みたいな状態になっている俺に「貴大は好きだと思うよ」と彼女からのヒント。そのヒントの所為で余計に難しくなったような気がするが。
 結論から言えば、彼女の「貴大は好き」という言葉は、間違いではなかった。確かに好きだけど、色々語弊を生みかねないから、今後はあまりそういうことを言わないで欲しい。
「え、マジで?」
「……ダメだった?」
「いや!ダメじゃない!ありがとな!」
「よかった」
 ダメじゃない。すげぇ嬉しい。俺の好みがよく分かってる。ただ、なんていうか、俺へのプレゼントを考えてこれが浮かんだんだな、って思うと複雑な気持ちになるだけ。プレゼントである派手な柄のパンツを片手に彼女に微笑む俺、って傍から見たら不審者に見えないだろうか。捕まりませんように。

 次の日の部活前。
 彼女から貰ったパンツを履いた俺は、いつもよりゆっくりと服を脱いだ。自分から見てほしいとは言わないけれど、誰かが気付いてくれることを期待していないわけでもない。今日のパンツは宇宙柄。いくつかあった中で、俺が一番気に入ったやつだ。
「マッキー、今日は一段と派手なパンツ履いてるね」
 そう真っ先に声を掛けてきたのは主将の及川。こいつは良くも悪くも、人のことをよく見ている。女子が髪切っただとか、そういうのにすぐ気づけるタイプだ。だからモテるんだよな、俺も今惚れかけた、なんて言葉を飲み込んで「あぁ」と頷いてみせる。
 及川がバカみたいに明るくてでかい声で「いいね!」と言ってくれれば大成功。仲間たちが食い付いてくるのも時間の問題だ。
「彼女から貰った」
「良いセンスしてんな」
「花巻の彼女ってセンスいいよね」
「マッキーの好み分かってます、って感じする」
 みんなに彼女を褒められてニヤニヤしている俺に、ふと聞こえてきたのは、お前はいつも幸せそうで羨ましいな、と誰かの一言。宇宙で一番幸せ、という言葉の使い時が来たような気がしたけれど、俺にはまだ「幸せ」という言葉がやけにくすぐったくて。
 パンツ丸出しでニヤニヤする俺。これはもう、捕まるかもしれない。



リクエスト・はなこちゃん(180415)






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