音駒 | ナノ


▽ 星の隙間に並べて


きっと、あたし達は今までもこれからも変わらずに生きていくんだと、合宿中の夜にふと思った。周りでは賑やかな人達が枕投げ大会で盛り上がっているというのに、そんなことには目もくれず、あたしと研磨の二人はジッとゲーム画面を見つめる。最早、この光景が当たり前になっていて、誰もあたし達を気に留めようとしない。
それでいい。否、それがいいのだ。

「ここのボス強い……」
「研磨でも勝てないなんて……」
「少し戻ってレベル上げないと、」

このゲームに関しては研磨が先輩だが、小さい頃から一緒にゲームをしてきたあたし達に経験の差なんてものはあまりなくて。ライバルとして刺激しあいながら、攻略法を教え合って協力していく、つまり同志なんだと思ってる。と言っても、あくまでもそれはゲームに関する話。現実は恋人として仲睦まじくやっているつもりだ。

「あ、合宿終わったら新しくできたカフェ行ってみたい。」
「うん、いいよ。」
「ゲーム持っていくけど。」
「わかってる。」

今はゲーム中だから会話が長く続かないけれど、それでも良いのだ。研磨はあたしとの約束を忘れたことがないし、体を動かすこと以外なら大体のことは付き合ってくれるし。それに、よく誤解されがちだけど、研磨だって立派な男の子だ。

「名無しさん、」

少し疲れたのかゲームを中断してゲーム機を鞄にそっと入れた彼は、あたしを呼ぶなり大きな目でじっと見つめる。そんな彼の仕草にドキドキと胸が鳴るのを感じながら見つめ返せば、彼はにこりと笑って。それからそっとキスを一つ。
みんなが見ているかもしれない、なんて、そんなことは彼にとってどうでも良いのだ。この世界にはあたし達しかいないのだから。例え周りの仲間たちが騒いだところで、研磨が「キスくらいでどうしたの?」と軽くあしらうことは目に見えている。

「名無しさん、好きだよ。」
「うん、あたしも。」

あたし達はきっと、これからもこのまま生きていく。星の隙間に敷き詰められた暗闇のように、誰も気にしないあたし達だけの世界で。


(160223)お題...まねきねこ


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