▽ 降りしきる雨
「服、適当に俺の出しとくから風呂入れよ。」
「ありがと。」
天気予報士は当てにならない。今日は傘のいらない日になるでしょう、確かに朝の天気予報では綺麗なお姉さんがそう言っていたのだ。だからそれを信じた俺と彼女は傘を持たずに学校に行き、まんまと騙された。しかも土砂降りときたもんだから、これから天気予報を信用できない。
幼馴染の名無しさんだが、俺の方が少し家が近いってことで連れてきた。雨に当たったことは最悪だったが、こういうハプニングは嫌いじゃない。
「クロ、やっぱ大きい。」
「まぁしゃーねぇだろ。下着置いといて正解だったな。」
「今回ばかりは本当に良かったと思ってる。」
置いといた、と言っても彼女と俺は恋人同士ではない。単に幼馴染であるが故に家族同士が仲良くて、もう一人の幼馴染である研磨と一緒に泊まりに来ることがあるのだ。そういう時に持ってくるのを忘れたら使うらしい。
「こんなことなら着替えも置いておけばよかった。」
「それは俺ので十分だろ。」
「えー、大きい。」
それが良いんだけど、なんて零したら殴られるだろうか。首回りが大きいせいか下着の紐がチラリと見えていて、彼氏服を着る彼女が萌える、なんて部員たちの話を思い出した。これは確かに萌えるな。そう心の中で頷いていれば、いつの間にかガン見してしまっていたらしい俺に、名無しさんは顔を赤らめた。
「な、なんか変?」
「いや、変っていうか、」
雨の日は滑りやすいだなんてよく言ったもんで、俺の口も滑りやすくなってしまったのかもしれない。「好きだなって思って。」零れてしまったものを飲み込むように、手で口を覆うがすでに遅く。赤い顔をした彼女は「雨でよかった」と嬉しそうに笑うのだった。
(160105)お題...
まねきねこ様
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